雨丘もびり

金メダル男の雨丘もびりのレビュー・感想・評価

金メダル男(2016年製作の映画)
5.0
.....ニクめない映画で困るなー(^^;)
     
おそらく、監督はもう、金メダルに憧れていないクリエイター。
俳優たちもそう。
   
でも、承認欲求だけをエネルギーに頑張っていた頃の自分を、ちゃんと抱きしめながら、いまの道を歩んでいる。
   
金メダルを獲れなくても、その仕事を続けてきた人たち。
彼らだからこそ演じられるトンデモ喜劇が、しみじみ味わい深く、愛おしい。
   
初期衝動は、一等賞を取って"褒められたい"という欲。
それは、「小さいころから水泳が好きで」とか「ヴァイオリニストのXXXに憧れて」とか、"大人に言わされてる動機"よりずっとみっともなくて、空っぽで、心から理解できる衝動。
そんなものだ。
    
それが成長の段階で、「ひとの評価は、欲しいけど、求めすぎても無益だ」と気付く。
自分でもハテナな出し物が評価されたり、それならと同じことをもう一度やったらそっぽ向かれたり、もてはやされたり飽きられたり。
その混乱の中、それでも続けるイイワケとして、「やっぱりお笑いが好きだから」という"大人の動機"も備えるようになる。
でも褒められたい。どっちもホンネ。
そんなものだ。
    
秋田泉一の身勝手な生き方や、ラッキーすぎるトンデモ展開に冷めるけど、
ザツな両親からザツにつくられた男がガンバってる、という愉快wな設定があるおかげで、なーんか見捨てられない不思議。
    
挫折の描写はもうちょっと重くても良いかな。
同業者や後輩への嫉妬とか。
負の熱量が感じられたら、もっと私好みw。
   
一等賞を本気で目指す男の映画として観たら、楽しめないだろうな~と思う。
   
この映画は、ハリボテの目標を目指すみちのりで鍛えちゃった、使い勝手のよくわからない筋力の愉快さを笑う物語。
いつかのナゾ努力が己を助くることがある、というおかしさの映画。
熱血な自慢が無く、「あの時の苦労が今のオレを」みたいな説教クサさも無い。
笑いとは?みたいに芸論を押し付けても来ない。
   
人生ってほんと、ままならないよね。
こういうフラットなおじさんが、私たちの少し先で照れ笑い浮かべてることを、とても嬉しく思います(^^)。
    
私からも、星5つの金メダル。
フフフ、ちょっとイヤがらせ込みですよw。