まさか差別問題にまで踏み込んだ、こんな深い作品だとは思わずに鑑賞した。最初は老いた老夫婦が思い出に後ろ髪を引かれながらも新しい終の住処を探すハートフル・ドラマかと思っていたのに、徐々に心の中にすっとささるとげのようなものが劇中に現れ、モーガン・フリーマンの（セリフではなく）表情や演技から、それが偏見や差別、そして非寛容な社会に対する問題提起なんだ、ということがすっと浮き上がってくるような深みのある映画だった。最後、夫が決心を固める瞬間の演出は圧巻。
おしむらくは、劇中、3 本のストーリーがパラレルに走るのだが、もうすこし絡み合ってほしかった。これどんな話になってくのかな、どうつながってくのかな、と期待してしまったので、最後にもうすこしすっきりした気持ちになりたかった。
モーガン・フリーマンの字面通り着飾りのない名演はさることながら、ダイアン・キートンの強さと可愛らしさにやられた。笑顔がほんとうにかわいい。ときに不器用で、かみ合わない瞬間があったとしても、お互いへの気遣いと愛情が絶えることのない、自然体の夫婦関係。とても理想的に感じた。
