リッキー

ニューヨーク 眺めのいい部屋売りますのリッキーのレビュー・感想・評価

4.1
871本目。
主演のモーガン・フリーマンとダイアン・キートンの老夫婦役が見事にはまっています。
ニューヨークの眺めのよいアパートの5階に40年近く二人で暮らしていましたが,このアパートにはエレベータがありません。年老いた二人のこれからの利便性を考え,愛着のある我が家を手放し,替わりの新しい家を探す物語です。
このように内容は明快ですが,とても味わい深いお話です。

家の売買中に橋のテロ事件と愛犬の健康問題が同時に進行します。無理に入れ込んだようなエピソードですが,この作品では夫婦の回顧録として重要なエピソードとなります。

黒人と白人の結婚は当時,祝福される時代ではなく,その差別・偏見を乗り切って現在に至りますが,その苦労は相当なものであったはずです。橋のテロ事件の容疑者がイスラム教徒ということで,内覧会中の参加者が容疑者に対して差別的発言をします。その発言により夫婦が差別により苦しんでいたころを思いだします。
それから愛犬がヘルニアで歩行困難になり,検査代(1000ドル),手術代(10000ドル)と急な出費がかさみます。転居するのにお金を節約しなくてはいけませんが,夫はいくらかかってもよいから治療してくれと訴えます。
その背景には二人は子宝に恵まれなかったため,愛犬を夫婦にとってかけがえのない我が子のような存在だったからです。

夫婦の住んでいるエリアの評価額は100万ドルと高額ですが,はじめは不動産として売却するつもりだったのが,内覧会での数々のエピソードにより40年の思い出を売却するような錯覚に陥り,売却・転居を断念してしまいます。改めて見回してみると何気ない景色が素晴らしく,落ち着くことから売却する理由も希薄だったことに気が付きます。

作品中,妻は若いころからメガネをかけており,内覧会でよく遭遇して語りかける少女がメガネっこだったり,赤いメガネが印象に残りました。

最後はニューヨークの街並みを上空から撮られた映像とヴァン・モリソンの「Have I told you lately」が流れてエンドロールに移ります。「最近愛していると言ったかな? 君に勝る女性はいないと言ったことがあるかな?」との歌詞には今回のような年を重ねた夫婦にピッタリの曲です。作品中にも内覧会中にメガネっこと思い出の品のレコードをかけましたが,もちろんこの曲でした。
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