MasaichiYaguchi

アンジェリカの微笑みのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

アンジェリカの微笑み(2010年製作の映画)
2.3
今年4月に106歳で他界したマノエル・ド・オリヴェイラ監督が101歳の時に撮った本作は、監督の彼岸の境地が反映されているのか観念的。
若くして亡くなった富豪の美しい娘の最後の写真を撮った青年が、その後彼岸と此岸で迷走するように、観客も監督の意図が分からず混迷してしまう。
死者に魅入られる話は、「牡丹燈籠」や「雨月物語」等の日本の怪談にもあるが、これらの作品にある耽美的な要素や雰囲気が本作品では薄く、描かれた世界観、幻想譚がしっくりこない。
その違和感を特に呼び起こすのが、イザクが亡くなった娘アンジェリカ同様に執着する農夫たちの存在。
労働歌と共に鍬で葡萄畑を耕す彼らの存在は、神聖で冒し難いアンジェリカの存在とは真逆だ。
監督は汗と土埃、バイタリティーと俗に塗れた此岸から、静謐さと平安、永遠の愛に溢れた彼岸へ憧れ、そしてその道行を描きたかったのかもしれない。