マヒロ

アンジェリカの微笑みのマヒロのレビュー・感想・評価

アンジェリカの微笑み(2010年製作の映画)
2.5
カメラが趣味の青年・イザクは、不在だった街の写真家の代わりに、若くして亡くなった大富豪の家の娘・アンジェリカの写真を撮って欲しいと依頼される。美しく着飾ったアンジェリカの遺体を撮影していると、ファインダー越しに見た彼女の顔が突然微笑みかけてくる。その時から、イザクは何かに取り憑かれたようにアンジェリカを求め始める……というお話。

マノエル・ド・オリヴェイラ監督作品初鑑賞。ポルトガル映画も初めてかも?遅咲きのオリヴェイラ監督がなんと101歳の時に撮った作品とのことで、そのバイタリティに驚く。
アンジェリカの微笑みがイザクの幻覚なのか霊的な何かなのかは分からないが、それをきっかけにイザクは明らかに狂っていき、アンジェリカの亡霊と夜の空を飛び回ったり(直前に観た『アラジン』の飛行シーンとダブってちょっと面白かった)突然アンジェリカの名前を叫び出したり、だいぶ精神が蝕まれていく。
ただ、元々イザクは変わり者のようで、住んでいるアパートの大家さん?から気に掛けられながらもろくにコミュニケーションをとろうとせず、朝食を用意してもらっても机にすら座らずそっぽを向いてコーヒーを飲むのみと、徹底して周りの人間を遠ざけている。観客には分からない何かしらの原因でこの世に絶望していたイザクに、アンジェリカの姿を借りて死神が微笑んだ……と考えると俗っぽいけど個人的には腑に落ちる。

死と生の境界線が非常に曖昧なところは監督がご高齢だったから(というと失礼だが)というのもある気がして、肉体とは関係なくその人の心の在り方次第で簡単に向こうの世界に転んでしまうような死の近さが独特の感性だなと思った。
こういう価値観は面白くて好きだったんだけど、映画全体の雰囲気にはあまりノレず、例えば何度か出てくる農夫達の集団は何なのかとか、部屋でぼんやりするイザクを映していると突然外から車両が通る時のような謎の爆音が延々響き続けたりとか、果たして何だったのか咀嚼しきれない場面が結構多かった。

(2021.162)
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