ティムロビンスに激似

アンジェリカの微笑みのティムロビンスに激似のレビュー・感想・評価

アンジェリカの微笑み(2010年製作の映画)
4.0
主人公のイザクの寄宿舎における朝食シーンで、同じ寄宿生の老紳士2人がブラジルから招聘した技師を囲み、粒子から成る物質、そして反物質との対消滅によるエネルギーの発現等の量子力学について語るシーンがある。
そのシーンが妙に長尺で話も難解。一見、物語の本筋と関係がない余計なシーンだ。
しかし、主人公のイザクは彼らの会話を聞きながら、アンジェリカを想起する。
そして、彼は死したアンジェリカに恋をしている。

イザクは写真が趣味の、普段は石油会社に勤めるユダヤ人青年。
地元の名士の娘、アンジェリカが新婚間も無く亡くなったため、通夜が終わった深夜、死化粧を施したアンジェリカの写真を撮るよう依頼を受ける。
イザクの部屋の窓からは、ドウロ河を挟んでブドウ畑が広がる山々が見える。双眼鏡でブドウ畑を眺めていたイザクは、そこで畑を耕す農夫達の撮影を思い立つ。
イザクは部屋に戻り、これまで撮影した写真の現像に取り掛かる。
そして、部屋に吊るしたブドウ畑の農夫達の写真と、アンジェリカの写真とを交互に見比べる。
そこでは生々しく躍動する生命(農夫達)と静かに眠るような死(アンジェリカ)が対比される。
突如、写真の中のアンジェリカがニッコリとイザクに満面の笑みを向ける。なんと、アンジェリカは死んでいながら生きているのだ。

さて、ここで寄宿舎で老紳士達が議論していた量子力学に話を戻そう。
量子力学は、我々が生きているマクロの世界を限界まで細分化した、ミクロの世界を扱う学問だ。
この量子力学の世界では、マクロの世界の常識では計り知れない事象がしばしば起きる。
例えば「シュレーディンガーの猫」という例え話に代表されるような、1つの物質に関して2つの状態が重なり合う現象(死んでいる状態と生きている状態が重なり合う現象)が起きるといったように。
そして、「観測者」の存在も重要であり、上記のように状態が重なり合う物質は「観測者」が観測して初めて状態が「決まる」。

アンジェリカの場合も、イザクが彼女を観測することによって、ある時は死人として、ある時は生者として観測者イザクの前に立ち現れる。
イザクは狂おしいほどアンジェリカに恋い焦がれ、彼女が眠る墓地に向かってアンジェリカの名を叫ぶ。
「怪談」というよりも、決して結ばれることがない恋を描いた、絶望的なまでに切ないラブストーリーだ。
そして、生者(物質)であるイザクは、死者(反物質)のアンジェリカと幻想の中で触れ合い、ついには想いを遂げる(対消滅)。
実は、本作は「怪談」の姿を借りたハードSFラブストーリーだったのだ!というのは考え過ぎか。