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アンジェリカの微笑みのshitpieのレビュー・感想・評価

アンジェリカの微笑み(2010年製作の映画)
4.0
なんという反復。労働歌を歌う農夫たち。騒音を立てて走る早朝のトレーラー。物乞いをする乞食。鼻持ちならない小間使。いくつかの夜はやってきて、イザクはいつもの下宿先のベッドで安眠とは言いがたい時間を過ごし、また同じような朝を迎える。

この映画を最後まで貫くイヴェントである若きアンジェリカの死もまた、美しい小鳥とある若者の死によって反復される。その死は、反復を基調とする『アンジェリカの微笑み』においては避けがたい運命として、ごく自然にやってくる。

映画内の時間は明らかな、しかし滑らかな歪みを見せている。歌いながら鋤を振るう農夫たちは、次のシーンではトラクターで畑を耕し、機械で水か農薬を撒いている。イザクの愛機は時代遅れなフィルム・カメラである。一方でアンジェリカのお屋敷からやって来る車は真新しく現代的なバンだ。

時間に対して空間はどうなのかと言えば、恐ろしく偏執的なフレーミングと照明のコントロール下にあるその画はまさしく「オリヴェイラ的空間」と言うほかない異様な、まるで現実味のない絵画的で静的な空間を呈している(下宿の食堂における老人たちの、退屈で長ったらしい会話のシークエンスこそまさにオリヴェイラ的)。

それゆえにこれはオリヴェイラ流のタナトスとエロスに彩られた、美しくも恐ろしいファンタジー、あるいは怪談なのだろう。「ハリウッド」と映画内でも言及されている通りの、 50 年代ハリウッド映画のそれと見紛うようなアンジェリカとイザクの空中遊泳シークエンスにおける特殊効果(『スーパーマン』の第 1 作目を思い出した。あれは 70 年代か)は、この映画はファンタジーですよ、とオリヴェイラがわざわざ語って見せているかのようだ。

最後に余計なことを付け加えると、映画として総合的には、特に照明やフレーミングに関しては、(長編において)遺作となった『家族の灯り』のほうが鬼気迫る美しさが宿っていると思う。