ろ

ナショナル・シアター・ライヴ 2016「ハムレット」のろのレビュー・感想・評価

4.8


もう観る機会なんてないと思ってたよ、カンバーバッチさんの「ハムレット」!!!
運良く出町座さんの1週間限定上映を知り、初日にGO!
ほんとうにたのしくてあっというまの3時間半でした!

実はシェイクスピアのお話の中で、すきですきでたまらないのが「ハムレット」。
去年だったかな、たまたま放送されていた蜷川さんの舞台を観たときにものすごく感動したんです。特に、旅芸人が劇を披露する場面。わたしはもともとこのシーンがだいすきなのだけれど、蜷川さんの演出に度肝を抜かれました。
ひな壇のような赤い階段が舞台いっぱいに広がり、繰り広げられる殺人の一部始終。和の要素がぎゅっと詰め込まれたこのシーンはゾッとするほど美しく、それはもう忘れられないほどの衝撃でした。
あのシーンは一体どんなふうに描かれるのだろう。
ワクワクを胸に、幕が上がります。


Tシャツにジーンズ姿、レコードでジャズを聴きながら父の死を嘆くハムレット。
広間で開かれるのは婚礼の宴。
長いテーブルをダ・ヴィンチの「最後の晩餐」のように囲む一同。
ひとりだけ喪服のハムレットはまるで裏切り者のユダ。
父が亡くなってまだ2ヵ月だというのに、その弟と結婚する母を憎々しげに見つめます・・・。

父の亡霊により真実を知ったハムレットは狂気を演じ、復讐の機会をうかがうことに。
おもちゃの兵隊に扮して太鼓を叩き、書類が散らばるデスクの上を闊歩。電話を取っておどけてみせます。
さらに、イギリスから呼び寄せられた幼馴染をあしらって、城の塔で遊ぶハムレット。四方に銃を構えてバンバンバン・・・。


原作とは少しちがって、肉親への凄まじい怒りと軽蔑が感じられるこの舞台。
劇中劇でしつこいほど繰り返されるセリフ「わたしはあなたの愛を裏切りません。」
「ところが現実はどうだ?」煽るハムレットの姿に、愛を裏切った母への深い悲しみが滲みます。

そして、叔父を殺す動機も手段もちゃんとあるのに、なかなか実行することができない自分への苛立ち。「あいつは殺されるべきなのだ、地獄に堕ちるべきなのだ」復讐を肯定しつつも、罪の意識に苦しむハムレット。「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」彼の葛藤がひしひしと迫ります。


背中に“KING”とかいたコートをまとい、毒を盛る役をハムレット自ら演じる劇中劇。
まるで、一族全員が毒に倒れるのを暗示しているようで、なんとも恐ろしい!
とはいえ、墓掘りやポローニアスとのやり取りなど思わず笑っちゃうセリフも盛りだくさん!幕間20分間、映し出される客席からも興奮が伝わりました!


「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」というセリフでハッと思い出したNTLの舞台もまた観る機会があればなぁ!
ろ