純粋であるというのは、必ずしも常に良いことではないのですね・・・・・
マーク・ストロングの演技が圧巻で、純粋ではあるけれど何もかもが空回りした挙句、どうにもならない方向へと進んでしまう男の悲劇に心が奪われました。愛が深すぎて、この上なく愚かしく、狡く卑しくなってしまう主人公。でもこれが人間。少なくとも私にはこの男を責める資格はない。人間はそんなに清廉潔白なものじゃない。愚かでバカで間違いばかりです。
これ以上ないというほど簡素なステージング。効果的な音響。アーサー・ミラー作品をこういう方向で演出できるということに驚き、すごい才能の演出家だと感嘆しました。普通だったら具象の居間のセットを建て込んで作るところを、その全く反対のミニマリズムを極めている。それなのにこの上なくリアルで自然。全く違和感を感じない驚異のリアリズム。具象だ、抽象だ、と分けて考えることこそ凡庸そのものなんでしょうね。
リバイバル上演があったらもう一度観てみたいです。すばらしい傑作です。
