萩原くわがた

友だちのパパが好きの萩原くわがたのレビュー・感想・評価

友だちのパパが好き(2015年製作の映画)
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友達のパパが好きになった大学生の女性が主人公…ではなくてその友達、つまりそのパパの娘が主人公なんだけど、この「友達(21歳)のパパ(50歳)が好き」から始まる暴走する恋愛感情の他者の視点からの俯瞰は非常にグロテスクでエキサイティング。

もしこの映画の主人公が「友達のパパを好きになった少女」でありその心情や熱意などが語られれば美女と野獣やロミオとジュリエットよろしく立派な”身分違いの2人による恋愛映画”となっていたかもしれない。しかし本作は徹底して他人目線からこの事象を俯瞰させるため、そんな恋愛の様子は理解できない。というか現実にはあってならないし変態的だし気持ち悪い…と見ている方は現実的な感情で埋め尽くされる。
そんな変態的存在の女性とその周囲の人間たちの男女関係の歯車が恐ろしくも噛み合い、映画はどんどんスリリングな方向へ進んでいく。
主人公以外の登場人物のほとんどが歪な男女関係を持っており群像劇としても楽しめる。カメラワークは定点の長回しを多用し、セリフ運びもリアルなものとなっているため「他人の恋愛の俯瞰」の感覚を強めるので、他人の恋愛が拗れる様子を覗き見るのを楽しめる人にとってはこれ以上無い映画かもしれない。
ラストも含め、綺麗にハマっていたパズルの中に異物を無理矢理挿入したかのような歪な雰囲気は素晴らしく気持ちが悪く、大変楽しめた映画だった。