アズマロルヴァケル

野生のなまはげのアズマロルヴァケルのレビュー・感想・評価

野生のなまはげ(2015年製作の映画)
3.6
日本を代表する低予算映画

秋田県の小田半島にて、犬の散歩をしていた男性が罠にかかっているなまはげを発見したことから東京の動物園で一般公開されることになったのですが、移送中に運転手がトイレに行っている隙に鍵を包丁で破壊してその場で逃走してしまう。なまはげは住宅街に身を潜めると、
空き缶のポイ捨てをする一人の少年を発見するのだった。少年の名前は麻生守。
つい数ヵ月ほど前に離婚したために母子家庭で、なおかつ学校をズル休みして神社で雑貨屋をやっている父親から貰ったパチンガーやレーザーポインターで遊んでばかりいた。なまはげは彼を追いかけた末に守のマンションの部屋に転がり込んでしまい、守は母親にバレないように
なまはげをかくまうことにしたが、ハム・ソーセージを盗み食いをしてばかりする。守は暫くの間は内緒でなまはげを飼育し続けたのだが…。

うーん、あまりにぶっ飛んでいて77分という短時間でありながらありったけの演出で楽しませようとしている点に凄く面白く出来ていて、隅から隅まで話をしたいのですがキリが無いほど突っこみどころはあります。

まず、大体なまはげはあくまで人間なのにあたかも動物として扱われているという点で、衣服脱げばふんどし姿のおっさんなのに簡単にペットとして扱ってるかんてバカかと思ってなりませんでした。
で、次に移送中のなまはげが逃げたのにも関わらずこうも誰も探そうとしないなんて…(広島の刑務所の囚人が脱走したニュースは大きい話なのに。)そもそもなまはげ自体がこの物語の世界では普通に買われているかと思いきや、野生のなまはげを買ってはいけないという事実を本編で聞き、モト冬樹の野生のスズメを飼育していた出来事を彷彿とさせるような。

そして、演出が序盤ではホラーのような演出を加えつつも後半ではヒューマンドラマ的な手工を出しつつも段々コメディ色全開に秋田の魅力を紹介しながらお涙頂戴のシーンで締めてくれます。ちょっと救いがなかったのは守のお父さんが知らないニューハーフの人と関係を結んでいたのはなんだかなぁ。

笑えるシーンは幾つかありますが、悪徳ペットショップの佐藤兄弟が聞きこみをしている際におばちゃんたちに話を聞こうとしているのですが、わざわざおデブの兄がおばちゃんたちに聞いてからハイエースにいる弟にいちいち報告するシーンなんかは「お前車から降りろよ!」となったり、兄弟にやられそうになっている教授が守にお小遣いを渡したのにも関わらずゲーセンなり旅館の宿泊代なりで
数万円のカネをスッカラカンにしたり、
教授や守が悪徳ペットショップを見つけた時に潔い言い方で「PETSHOP!!」と言ったり、守が悪い行動をすると「*良い子はマネしないでね。」とテロップを出していたりとお笑いのツボを押さえてはいました。

ドラマ面では、自然体な母と子の日常や
グダグダと環境破壊を訴える教授の姿と
しっかりと押さえた一方で、悪徳ペットショップのお得意様がせっかく妖怪城にいる風格のあるお方かと思いきや、佐藤兄弟の弟の吹き矢にやられたり、挙げ句には見せ場のないまま佐藤兄弟もろとも死んだりと何も意味もないねぇじゃねぇか!!とガッカリ。

一部の人物を除いてはほぼお笑い向けの演技になっていて、特に佐藤兄弟や教授に至ってそう言えるのですが、坂上忍プロデュースの芸能プロダクションアヴァンセ所属の中島蓮の演技は発展途上ではあるもののある程度は安定していた演技でした。

極めつけは「悪い子はいねえか!」と鳴き声をあげていたなまはげがまさかのひと言を放つのですが、感動すると同時に
最初から他の言葉話せることができなかったのかと突っこみたくなったけど、良くも悪くも良作の映画で、こんな内容ならスタジオポノックが「メアリと魔女の花」作るよりもこの映画のアニメ化やった方が面白いのではと思った一作でした。