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帰ってきたヒトラーのsmithmouseのレビュー・感想・評価

帰ってきたヒトラー(2015年製作の映画)
3.8
総統が上手に総統の本を装幀した。
総統、それはヒトラーユベントスでは無くレアル・マドリーのクリロナです。

「世界制覇 検索」

社会という溶媒に過激な物質を溶かしその反応を見るようなは不謹慎ドキュメンタリー風映画の傑作「ブルーノ」と同じくコーラにメントス系だった。
ヒトラーが突然街に現れたらこんな感じになるだろうという愉快な混乱はヒトラー役とその他の役者の熱演もありメチャクチャ面白い。
「ガソリン臭い」にはかなり笑った(゚∀゚)。

しかし、あくまでも笑いの対象は触れただけでも罪という"穢"の感染る大罪人(日本の某アイドルグループの件とか)。
この映画のヒトラーもウイットに富み当意即妙かつ煽動的で指導者になるべくしてなったカリスマ怪物振りを完コピしてる。
1933年のドイツ人の選択は歴史にとっては転換点でも当時の世相からして何一つ特別なものでは無かったというところもさり気なさ過ぎて怖い。
「みんな最初は笑ってた」という言葉が示す通りこの映画は笑いの裏側に寒気がする面も持ち合わせてる。

極端な排外主義という社会の狂気を測るリトマス紙としてこういった映画が出てくるのは同じ枢軸国日本とは違うところ。
総統がテレビに抱く懸念はそのまんま日本の現状に当てはまってしまうと思うし、ネットを使い空気感染する"ヘイト"という伝染病に自分は罹らずに済むのか?等色々不安にさせられた。
目線やモザイクの掛かる人間のヒトラーへの生のリアクションにも中々考えさせられた。

あるシーンに出てきたメノーラーが示す通りホロコーストというタブーにも少しではあるが触れている。

作中にメタ的視点が入り、入り組んではいても現実と紙一重に感じる有り得そうな虚構、容易に反転しうる理性と狂気というモノを見せられた。
笑えるが嗤えない(・_・;)。

シャレにならないジョークの映画。
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