Dachiko

帰ってきたヒトラーのDachikoのレビュー・感想・評価

帰ってきたヒトラー(2015年製作の映画)
3.7
この映画を見る前、ドイツ国民がどのようにヒトラーに再び傾倒していくのか、がとても気になった。
この映画を見た後、自分がヒトラーに傾倒するような素質を持っている気分がして、とても怖くなった。

画面内のヒトラーに少しでも、好意を抱いてしまったらそこでお終いだ。おそらく現実に彼のような人間が出現してしまったら、自分もナチス支持者と同じ側になってしまう、そんな気がする。
そういう事を著者のティムール・ヴェルメシュや監督のディヴィット・ヴェントは今作で試したいのではないだろうか。

作中でヒトラーが2014年のベルリンを闊歩するシーンは、演者はヒトラーだけで、歩行者は全員偶然その場に居合わせたドイツ国民だ。彼らの多くは躊躇う事なくヒトラーと写真を撮ったり握手をしたりしている。彼らは試され、そして見事に監督やヒトラーの手中に嵌ったのだ。彼ら自身が、ヒトラーを選んでしまった過去のように、歴史は繰り返すという事を証明してしまった。

だがそれもしょうがない事なのだとおもう。
彼の威風堂々たる風格、沈黙を武器にした完璧な演説力、それを見聞きしたものの心を掴む圧倒的な人心掌握、ドイツをより良くするという明確な野望とそれを達成できると感じさせてしまう程の信念の強さ。

彼が持つこれら1つ1つが人民の心を掴み、その人民が彼を選び、歴史的なモンスターが生まれた。

ヒトラーとはまさに支配を具現化したような存在であり、それは今も昔も変わらないのだ。