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帰ってきたヒトラーのSのレビュー・感想・評価

帰ってきたヒトラー(2015年製作の映画)
3.7
いやー面白いと言うか恐ろしいと言うか……。笑えるけど全く笑えない。ある意味最強に怖すぎる。昔も今も、民意によって選ばれたのはヒトラーだった。

途中までドキュメンタリーのように進んでいくけれど、あれ本当に一般の寄ってきた人との会話とかで進行させてるらしいですね。ところどころに目線が黒く隠されている人がいるんですけど、役者さんでは無いとか。ヒトラーの格好で街に出てそこに寄ってきた人や話しかけた人にインタビュー形式でアドリブで進む。よく考えられて出来てるなと思いました。リアル。

ラスト間近の演説シーンは素直にすごいと思いました。圧倒的に人を惹きつけるような話し方。ヒトラーに似てるヒトラーになり切ろうとしてる人が出てきたっていう注目度もあるけど、それを無しにしても人をその気にさせるのが上手い。そしてそれに人々は乗せられていく…。

タイムスリップしてきたヒトラーが、モノマネ芸人と間違われて国内を巡ったりテレビに出たり色々する話、映画を見る前に聞いていた話と、やっていることは本当に同じです。それをやってる。でもその方法というか、周りの人からの支持の得方や本人の考えやそれに影響されていく人々の自然な流れが笑えるんだけれど本当に笑えなかった。

よく出来た風刺映画。皮肉という言葉だけで納めていいのか。

今現在の私たちはヒトラーがどのような事をしてきた人か、どのような歴史を作ってしまった人かを知っているからこの流れは怖いなと思えるけれど、これを知らないでやられたら…と思うとどうなるかわからないよね。

何があれってヒトラー自身が完全に間違っている考えを持っているわけでも、何かを陥れようとかそういう考えで動いているんじゃなく、国民や国のことを考えての結果の行動で、そしてそれに対しての熱意と考えをしっかり持って自身で努力して持ち前の演説力で突き進んでいる事。実際のヒトラーも結果的に言えばあのような不幸な歴史を作ってしまったけれど、政治家になった理由や立ち上がった理由は間違ってはいなかったし。

なんかもう面白おかしく描かれていて笑えるところはあるんだけど笑った後に恐怖に陥るというか、乾いた笑いがたくさん出た…こういう感じの見終わった後のどこか不気味な感覚とか恐怖は何とも言えない。

すっごいストーリーが面白いとか、ドキュメンタリー要素も強いのでそういうんじゃないんだけど、言葉に表せない面白さというか恐怖や不気味さをとても評価したい。
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