島袋健太郎

帰ってきたヒトラーの島袋健太郎のレビュー・感想・評価

帰ってきたヒトラー(2015年製作の映画)
-
胸糞悪くなる映画や、後味の悪い映画は大好きなのだが。
本作は傑作であるということを、前提に言えば、まったくもって笑えない。

笑うには、本作が製作された2014年からさらに、現代に至るまでの世界的な「右傾化」と歴史の風化、に至るまでテーマ性、作劇の中にある「風刺」が露わにする現実が生々しくそして恐ろし過ぎて、引きつってしまう。

アドルフ・ヒトラーが如何にアイコンと化していて、実際のところ娯楽である映画も長い歴史の中で「加担」してきたという側面もあり、現代に蘇ったヒトラーというだけでも充分面白いストーリーになる。
更に、ドキュメントとしてヒトラーの扮装をし、人々の意見を聞いて回り露わになる政情への不満の声。
閉塞感が確実に「右傾化」への人々の意識を物語る。
そして、それをユニークに、そして巧妙に掬い上げてしまう「ヒトラー」というアイコン。

ストーリーとしての構成と、テーマへの言及は見事で先鋭的。
とにかくその試みだけで面白いし、画面に映し出されているものを見るだけで、おぞましくなる。
ただ、それ以外の細かなディテールだったり人物の描き方が如何にもな展開だったりする点もあり、映画的カタルシスには乏しいところが残念だとも思う。

特にドイツに限った話じゃなく、歴史の風化というのは確実に訪れるしその反動、人々の無意識、考え方、とにかくその難しさと危うさに鳥肌が立ちまくりの作品だった。