JIZE

パーティで女の子に話しかけるにはのJIZEのレビュー・感想・評価

2.2
1977年のロンドン郊外を舞台に内気なパンク少年が古い一軒家で開かれていたパーティへもぐり込んだ事から少年と遠い惑星から舞い降りた少女との恋愛を紡いだボーイミーツガールもの‼何てエモい作品なんだ…というのが第一印象である。観終えた瞬間は何の映像を約103分間観続けていたのか実直な感想を呈せば非常に困惑し戸惑う節があった。主に若者における相容れない他者に対した"思考の放棄(排他主義)"の警鐘を謳った作品である。極めて全編は妄想スイッチ全開のキッチュな哀感を織り込み展開される。それこそ冒頭,悪夢に魘された主人公エンが飛び起き自室を飛び出しては自転車を乗り回しながらステッカーをありとあらゆる場所へ貼り同時にその場面で「ニュー・ローズ」の音楽が鳴り響き作品の入口が描かれる。最初で若者のアンニュイな世界観がPV調なカメラ撮影も相まって鮮烈に提示された。そもそもプロットは中二病マインド全開の恋物語で48時間のリミット制限など急ピッチでほぼ『ロミオとジュリエット(1966年)』状態になり展開される。作品の構造でも前半は地上に落ちてきた異星人に主人公含めた悪友3人が文字通り"吸収"されかけ作品の後半ではパンク集団と異星人集団との全面戦争が勃発し"摂食"の是非が問われる。大枠である異星間交際は禁じられ故郷の遠い惑星に帰郷というブッ飛びすぎたプロットが浮世離れし過ぎて理解できねえよ… という感想も自分の中ではありパンク関係の知識も一見仕様で型どられてないため倚形な世界観含め排他的なパンク全開の雰囲気が受け付けない。

→総評(異性間が導きだす遥かな自由への逃亡)。
超エモい若者の青春映画だと決め付けてしまえば楽であるがそう簡単な代物ではない。やはり異星人側の説教臭いタブーエトセトラ云々の辺りでこの映画に対する興味(評価)を失ってしまったのは事実なのだが序盤のエル・ファニング演じるザンとエンのPV調な撮影の魅せ方で若者のベタな恋模様を紡いだ箇所以外は正直なところ全部ダメだった…また異星人の拍子抜けするような格好,言動,規制など奇っ怪な習性が積み重なっていく不気味インフレも疑問の連続に他ならない。それ以上の何かに昇華できてない以上はアバンギャルドな方向へ寄せ過ぎたことは否めなかった。地球人側の動向でも主人公やパンク集団を除いた周囲の状態がうやむやで伏せられた状態で進むのも致命的でそもそも作品内の視野が狭いの一言に尽きてしまう。脚本のそれ自体もファシズムや服従,消費社会に対して自由への比喩ってアンチ付けるならもうちょい別のアプローチで親近感が保てる工夫が欲しかった。終盤で異星人たちが身内問答し出す辺りは控え目に言って何物にも効果を挙げれておらず拷問だった。まさしく映画の日に観て正解な作品。もともとパンクミュージックが好きかどうかで評価が割れそうな作品だった。この作品のジャケ写にもあるよう都会派のシティボーイとガールが現代的なアプローチを織り込み恋に落ちる普通のプロットが観たかった。質感あるグレイ地のロングコートへ身を包んだミルク肌のエル・ファニングをただただ眺め続ける外観留まりの薄い作品であった。
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