八木

無限の住人の八木のレビュー・感想・評価

無限の住人(2017年製作の映画)
3.0
基本的に木村拓哉の俳優仕事が好きなので、無限の住人もわりと期待していきました。三池崇史には何の思い入れもありません。
「頑張って省略してるぞ!」「もう違和感20個くらい出てる気がするけどまだ頑張ってるぞ!」とようやく立ち上がったわが子をロープを挟んで手拍子しながら応援しているような気持ちでずっと見てきた終盤、一応のラスボスとの対決に突入する手前でその気持ちが切れてることに気づきました。長すぎる斬り合いと、原作から詰め込みすぎて使い捨てられまくるキャラクター、単純化しすぎた万次と凛の絆、120分を超える上映時間、終盤のトゥーマッチな斬り合いのボリュームが3本立てになってることなど「もう何かごまかすのも面倒くせえな」と素直に思えました。直前に原作を全巻読んでないと一撃でストーリーを追うのは難しいと思います。まあ大づかみで全然かまわん内容ですけど。
主要キャラはぱっと見て「コスプレ」としか形容できない恰好をしていたり、戦いにくそうな武器を使用していたり、やってることと画面のトーンが全く合ってないように見えた。まるで過去このような出来ごとがあったかのように、全体的にシリアスなトーンなのに「三節棍の両端に二股の刃がついたもの」を三味線に仕込ませて待ち伏せする、ふともも丸見えの紫の着物を来た女が襲ってくると、どこの世界の話なのか混乱してしまう。もうちょっとマンガ色を落とせないもんだろうか。
あと、凛はミスキャストじゃなかろうか。いくらなんでも幼すぎるように見える。可愛いのは可愛いし、演技も非常に頑張ってると思うけど、この映画では始めから最後までずっと役立たずで、要所で万次にイメクラを仕掛けるだけの女に見えた。この凛のお兄ちゃんプレイで、万次との関係性が単純化されたように見えました。守る・守られる関係性ポルノとして見ると、ノイズが大きくて完成度は低いし。中途半端です(あとで検索したら女優さん19歳だそうな、14歳くらいに見えた)。
ただ、木村拓哉の演技は万次という役柄にばっちりハマってて素晴らしかったと思います。文句はあるけど、凛ちゃんも可愛かったし。あと、この映画で初めて市原隼人の演技を見たけど、シラが救いようのないゴミ人間だということがすぐにわかる危なさを、声のトーンや体格で表せてたと思います。いい役者やん。時代劇ってどうしても歪んだ世界なので、ハッタリの足りない役者は見てて物足りないんですよね。アノツ役の福士蒼汰は画面に映る回数が多すぎる分、物足りなく感じたなあ。この脚本でこれだけカラーを統一して一応「生きるだ死ぬだ」といったテーマを浮かび上がらせてた三池崇史もすごいなあ、と思いました。
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