＜典型的な日本人男性の、紳士的な女性の口説き方のお手本＞
待ってました！！！
河瀬直美プロデュース、（若手韓国人監督）チャン・ゴンジェ監督の『ひと夏のファンタジア』のソフト化。
映画ファンの間では噂になっていたものの、公開劇場の少なさもあり、劇場で観られなかったので、ソフト化になるのを首を長くして待ってました！
良いです。良いですよ。
まさに、イメージ通りの雰囲気でした。（ただ地味で分かりにくい魅力なので、万人ウケはしないと思いますが）
作品自体は日韓合作なのですが、邦画の良い所と韓国映画の良い所のいいとこ取りした絶妙な雰囲気で『なるほど〜』という感じです。
舞台が奈良県五條市、つまりは河瀬直美監督のお膝元。（萌の朱雀の舞台）
特別なものが何もない、過疎化が進む里山の原風景を舞台にしている所が、河瀬直美監督プロデュースって感じでした。
96分を２章にわけていて、第1章と第2章は同じキャストが演じていますが、ストーリーとしては繋がっていないようです。一瞬、繋がっているのかな？とも思いましたが、どうも違うようです。
前半は五條市全体の街をドキュメンタリー風にとらえることで、街の過疎化や、街に住む人びとの営み全体をモノクロームで表現したもの。
後半は一点してカラー映像になり、日本人男性と韓国人女性のひと夏の出会いを切り取ることで、より人と人の関係性に寄ったもの。
この、２部構成で組み立てられた映画です。
全体的に役者さんの透明感溢れる演技と、街の人達のドキュメンタリー映像が溶け込んでいて、非常に素晴らしいです。
とりわけ、役者さんの演技はどこまで台本でどこからがアドリブなのだろう？って思いました。
いわゆる、『台本読んでる感』が全くない。（ここが最も大事！）
後半は大分会話劇になっているのですが、セリフまわしが自然で。
日本語が分からない韓国人監督作品なので、こういう細かい演出は、どうやって作ったんだろう？と思いました。ドキュメンタリー風の画を組み合わせる感じが河瀬直美監督のアレンジにも似ているので、やはり河瀬直美プロデュース作品という所でしょうか？
特に、第２章の岩瀬亮さんとキム・セビョクさんの雰囲気、まさに、リチャード・リンクレイターの『ビフォアシリーズ』ですよね。古都の雰囲気を醸し出す五條の街を、絶妙な距離感で歩く２人のシーンが最高でした！
さらに、全体的な画づくりはホン・サンス作品っぽい雰囲気もあります。カメラがズームインするのは無かったですが（笑）、テンポも構図も、よく似ています。
第2のホン・サンスと呼ばれる意味がよく分かりました。でも、ホン・サンス作品よりもロマンティックで手触りが優しい感じが、より良いですよ。この監督好きです。
また、このラブストーリーは、日本人男性と韓国人女性という組み合わせが功を奏しています。これが逆（韓国人男性と日本人女性）だったら、だいぶ雰囲気が変わっていると思いました。韓国人男性と日本人男性って、だいぶタイプが違う気がしますから。（笑）
そして、岩瀬亮さん演じる（普通の）日本人男性の女性の口説き方がいいんですよ。めちゃめちゃ良い。心地よい安定感があります。
特に、何が良いって『距離感』です。
強引な事はしない、会話は質問系、二人で並んで歩くシーンは、間に人が一人分入るくらいの距離感なんですよ。（最高）普通に見えますけど、男性側（岩瀬亮）が女性の歩幅に合わせて歩くんですよ。
普通は、若干、男性が前に出てしまいますよね。普通に歩くと。
でも、彼は、彼女の歩調に自然に合わせて歩く。しかも大分距離をとって。
会話は、いつも『ミジョンは◎◎なの？』っていう具合に、質問で口説くんですよね。これ、紳士的な口説き方のお手本。（笑）
典型的な日本人男性の、紳士的な女性の口説き方で『めっちゃ、いいわ』と思いました。
このあたりの演出が、すごく心地よかったです。
自然にニヤニヤさせてしまう映画。最近の邦画でも少ないんですよねー。久しぶりに良かったです。
イーサン・ホークが演じた『ビフォア・サンライズ』では、アメリカ人の彼の距離の詰め方は、早いんですよ。ぐいっという感じね。（笑）相手もフランス人女性なんで、それはそれでロマンティックですが。
本作は、日韓合作という意味合いでは、独特の雰囲気があって良かったです。
兎にも角にも、奈良県五條市というニッチな場所を舞台にしていますが、これが、魅力を最大限引き出された映画に仕上がっているという事は、本当に素晴らしいなと感じます。（日本の古都を知ってもらうという意味合いでも。）
ラストの余韻感も最高でしたー。
そして、（DVDで観たので）DVD特典がついてたんですけど、DVD特典もスゴク良かったので、ぜひレンタルして観てください。
