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ワイルド コンビネーション:アーサーラッセルの肖像のtsuyocinemaのレビュー・感想・評価

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(フォーク、JAZZ、NEW WAVE、DISCO…)ジャンルや(アコースティック/エレクトロニック問わない)手法を縦横無尽に横断し、多種多様な名作を排出しまくったにも関わらず、生前の評価が追いつかなかった才人アーサー・ラッセルのドキュメンタリー。
アーサー・ラッセルとは大学時代に誰に勧められるでもなく試聴で出会い、ポストロックやポストハードコアを聴きつつダンスミュージックを聴き始めた自分にそう縦横無尽な活動が妙にフィットして、DINOSAUR L名義のDISCO楽曲群にやられてLOFTまわりの楽曲やデトロイトテクノを好きになるきっかけになったということで、好きなアーティストの筆頭の一人。

両親、ゲイの彼氏、音楽関係者などのインタビューと過去の映像から構成される本作で驚いたこととして、まず親の口から普通にジョン・ケージという単語が出てくるとか文化資本の高さ…また詩人のアレン・ギンズバーグの証言でアレン・ギンズバーグ、リチャード・ヘル、アーサー・ラッセルが同じマンションに住んでたとか「どんなトキワ荘だよ!」と思わず突っ込んで観てしまいました。
DISCOの名盤「GO BANG!」の黒人女性ボーカルが出演して録音時のエピソードが聞けたことや、キッチンという前衛表現空間の音楽監督(キュレーター的立ち位置?)をアーサーが務めたからこそ彼の音楽に多面性も先鋭性とポップスネスのバランスを担保してた事実が知れたことも良かったです。もうただのファン視点。

本編通してストーンズに曲パクったな!で噛み付くとかなかなかパラノイアティックな繊細さをもつ才人はやはり仕事をする上では、面倒くさいんだなぁというの本当の天才のクリエイティブはクオリティもクオンティティも半端無いと再認識。
そしてその才能とは別に恋人にとっては「仕事が終わってソファーで横でくつろぎたい人」という一面も垣間見れ、その人間性も彼の音楽性にやはり通底していて、改めて天才!と思えました。

本作中の音楽評論家がアーサー・ラッセルの音楽を評した「アーサーの音楽について海のようで果てしない、海洋的な無形状のイメージを使いながら独自の形状を作り上げていく」は我が意を得たりでございました!
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