ニシカ

ジョン・F・ドノヴァンの死と生のニシカのレビュー・感想・評価

3.6

「ありのままでいい」
「できないよ」




濡れるようなカラーリング映像と生活を彩るような音楽の美しさは流石の一言。
(というか曲のセレクトがずるいぞ)

それぞれ観る者の琴線に触れる曲がある仕掛けにもなっている気がしますが、自分はエンディングで流れるThe VerveのBitter Sweet Symphonyでノックアウト。



グザヴィエ・ドラン監督最新作は、若き人気俳優の死の真相とそれまでに秘密裏に文通していた少年との物語。自殺か、他殺か、真相は闇の中。10年後、文通相手の少年が大人となりかつての人気俳優との手紙を出版したことで話は幕をあける。

ドランの大きなテーマである家族(母)と同性愛は変わらず、人気俳優であったジョン・F・ドノヴァン(キット・ハリントン)は理解されない秘密からの孤独を、少年ルパート・ターナー(ジェイコブ・トレンブレイ)は学校でのいじめからの孤独に悩まされ、そしてそれぞれ母親との確執、すれ違いが本人をさらに閉鎖的感情へ追い込みをかける、。

2006年ニューヨークから2017年プラハと過去から現在へと2人の人生を行き来しながら、紛争地帯等の芸能とは違う畑であるジャーナリストのオードリー(タンディ・ニュートン)が見つめるラストカットには、それでも時が流れ死を選ぶしかなかった時代は過去となり、現在の世界には救いや希望を感じることが出来るはずだというメッセージが込められていた気がします。


でもちょっと音楽の力を借りすぎかな…。



少年ルパート・ターナーの母サム・ターナーを演じたのはナタリー・ポートマン。
「レオン」の少女マチルダはすっかり母親役が似合う齢へ。
あぁ、光陰矢の如しだなぁ。
ニシカ

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