みんと

ジョン・F・ドノヴァンの死と生のみんとのネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

ドランお得意の、母子の関係とセクシャリティ。今までの彼の作品では、それを投影、もしくは自演した主人公は、限りなく彼自身に近い人だったが、今回は俳優。新しかった。

「裕福な人の贅沢な悩み」という無頓着な声の裏にある有名業の苦悩。ウィルに入室を拒否された後、引きのカメラで映された誰もいない外でポツンと立つ「一人の青年」としてのジョンが印象的だった。
どんな人生の選択をしても、自分を偽ることなく等身大の姿であるために、常に自分自身を守ること、愛することが出来る人が、やっぱり強いなとつくづく思う。

ただ、うるさいくらいの(褒めてる)映像美と怒鳴り合いで人生の苦悩を具現化する彼の映画が好きなので、少し物足りなさを感じてしまった。あと、ジョンとルパートのそれぞれの母との関係の描き方も、今までの作品と比べると雑さを感じてしまった。なんというか、あっさり母親が息子への(勝手な)愛を急に表現して、互いに愛を再確認するあたりがな…。そこまでの過程が少し物足りなかった。だけど、逆にそれがリアルとも捉えられた。
例えば、ルパートが母親に初めて泣き叫んで不満や孤独を訴えた(このジャイコブ君の演技が素晴らしかった)後に、その本音に寄り添い謝ることなく、頭ごなしに否定したり自分の感情論でものを言ったり、そして都合のいい時だけ唯一の理解者ぶる感じが、妙にリアルだった。
まあ本音を言うと、これまでの作品と比べたら綺麗すぎたかな…。親子関係もセクシャリティも、完璧に完結することなく、絶望と希望の混在が最後まで続くドラン映画がやっぱり好きかな…。混在は今回もしていたことにはしていたけど、なんか少し物足りない…。やっぱり、情報過多くらいの演出による、緻密な感情と人間関係のリアルがなかったからかな。毎回震えるほどの感動が起こるのに、少し勿体なかった。

独特な芸術性と世界観で、自身の生い立ちや苦悩を描くドラン映画は、これからも追っていこうと思う。新作も観なくては…。
みんと

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