ハル

あやしい彼女のハルのレビュー・感想・評価

あやしい彼女(2016年製作の映画)
3.8
オバちゃん(倍賞美津子)の破壊力が強烈すぎて出てくる度に笑ってしまう。
とにかく元気だし口が悪いし行動し続けるし。
それでも憎めないチャーミングなところが魅力的で冒頭から惹き込まれた。

とはいえ、責められたら凹んじゃったり、年齢の事を言われると居場所がなくなってしまう年齢。
哀愁漂う雰囲気は可愛くも切ない。

そして、途中からオバちゃんの中身は多部未華子へとチェンジ。
これを見てると真に凄いのは彼女なんだろうなと思わされる。
実年齢とかけ離れた役柄を心情豊かに演じているのはシンプルに実力があるからで、これまでにも様々な役柄をこなしてきたキャリアの巧みさと確かな表現力の高さを本作でも見せている。熱意と人間味をしっかり感じられ、見た目は若く中身はオバちゃんの体現度は見事。

続いて、作品がフォーカスしているのは「歌」
この点も実に興味深く、掘り下げたくなる。
倍賞美津子、北村匠海、多部未華子それぞれ歌手やバンド、ミュージカルで培った経歴を有する為、とにかくレベルが高いのだ。
物語に芯が一本きっちり通う。
中でも、多部未華子の歌唱シーンは何度か出てくるところ、その歌唱力の高さには心底驚かされた。

また、作中ではオバちゃんの実年齢に合わせ昔懐かしの歌謡曲を扱っている場面も散見するが、ここは極めてエモいポイント。

歌謡曲は今の楽曲とテイストは全然異なるけれど、耳に残るし聴きやすい。
難しく複雑なメロディーラインでは無く、誰しもが受け入れやすいテンポとキャッチーなフレーズで構成されており、今聞いても全く色褪せない良さがあった。

話の流れはオバちゃんがいなくなった事で誘拐騒ぎになったり、みんながオバちゃんを求めはじめたりと、感動的なコメディ作品の流れを確立しつつ、エンディングへとブレずに突き進んでいく。

笑いあり涙あり感動ありとはまさにこの映画の事を指しており、オバちゃんのままでは気付けなかった周囲からの優しさや愛情、中身がチェンジしてから描写されるシーンの数々に心を癒やされた。
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