クレミ

風櫃(フンクイ)の少年のクレミのレビュー・感想・評価

風櫃(フンクイ)の少年(1983年製作の映画)
4.2
たまらなくエモーショナルでノスタルジックな、侯孝賢らしい1本。息苦しくも瑞々しい若者たちの青春の日々に、侯孝賢の淡く柔らかな色彩と画作りがすごくマッチしている。相変わらずカッコいいカットの連発でよい。そして建物や部屋の中にいる人間の動きを撮るのが毎回最高に上手い。流れるようなカメラワークに計算された人物の動き。

侯孝賢の作品、何本か見てみて、「青春の終わりと新たな生活の始まり」「生まれ育った環境のしがらみと焦燥感、そしてそれらへの郷愁」みたいなものが何か一貫して感じられるような気がした。状況は違えどその感覚ってきっと誰もが持っている、もしくは持っていたものだと思っていて。だから彼の作品にはどこか懐かしさを感じるのかなぁ。

狭い田舎町では不良だと疎ましがられ、都会では孤独で金は無く、生き辛い。自己の居場所をそれぞれが探し求めながら、最後は街と人混みの中に収束されていく。自分の「椅子」を探し続けたアチンは、最後にはそこに座るのでなく、立ち上がって自ら声をあげるんですよ。こんなんズルいですよ。最高じゃないですか。
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