藤見実

風櫃(フンクイ)の少年の藤見実のレビュー・感想・評価

風櫃(フンクイ)の少年(1983年製作の映画)
3.7
ワイドでカラーの演出(ゴリオ爺さんかよ、みたいなとこあるけど)
これに尽きるんだが。

台湾の田舎の将来の進路も決めず学校もやめて現在生きている時間もなんだかんだ手持ち無沙汰で中途半端に喧嘩をしたり徒党を組んだりするヤングなボーイたちがヤバいやつらに目をつけられ、そこでのその色々な状況を打破するため・ここで死んで行きたくねえ的マインドで都会に出る。
住み始めた場所の向かいの男の同棲している女を好きになるけど手を出したりはしなかったりする頭の凹んだ父親のいる少年の、ラジオで日本語を勉強し始めるところが本当に愛おしい。

おしまいには、仲間の1人が兵役に行く前にカセットテープを大セールで売り出す場面があり、そこで「もう子どもではいられないし、いるつもりでもない」彼のさまざまな感情(失ったものが心に沈み込んでメランコリーになっていたそれとか)が、堰を切ったように「商売の呼び声」として爆発する。めちゃめちゃ映画らしいキメ。市場の人たちを丁寧に写しつつ、映画は名残惜しく終わる


台北にのがれる女を見送る場面の遮られるロングショットよかった

ビリヤードとかああいうノリはなんとなく中途半端に感じられたけどその中途半端な導入が台湾映画的な何かに見えるのはズル

女が男に財布を投げるのを真っ直ぐにとるとこがすごい良い、建物の構造勝ちってかんじ。下で男がバイクを唸らすのを女は上の階で腕組みしてる。それをコの字の90度まわったとこから少年は盗み見てる。女と視線があい、女は微笑む。

しかし父親の回想シーンでクラシックを流すのはどうしても笑ってしまうからやめてほしい
藤見実

藤見実