成川ジロー

疾風スプリンターの成川ジローのレビュー・感想・評価

疾風スプリンター(2015年製作の映画)
4.4
ロードレースのエンタメ映画って珍しい気がする。アニメでは『茄子 アンダルシアの夏』『茄子 スーツケースの渡り鳥』って言う二大傑作があるし、漫画では弱虫ペダルなんか凄い面白いけど、実写では見たことなかった。もしかして初めてかな。それらが好きって人に是非見てもらいたい。ロードレースに詳しい訳ではないけど、決定版というべき傑作になってるんじゃないかと個人的には思う。
まず肝心のレースシーンの撮影が大成功してると思う。本当に迫力のある絵が撮れてるし、テンポも良いし、作戦や展開もメチャクチャ熱くて手に汗握るし、自分は見ていて一緒に自転車を漕ぎたくなった。作戦開始の声、ラストスパートの叫び声、自転車のチェーン音、リアル事故にしか見えない痛みの伝わる事故シーン(ギアで切るのはちょっとやり過ぎだけど)、臨場感が凄い。物凄い人数を同時に自転車で走らせるのは、とても手間とお金がかかって大変だろうなと思った。その苦労が報われてると心底思った。
お話自体はシンプルで、主軸はスプリンターのチウ・ミンとクライマーのティエンの友情をどストレートに描いて、同時に先輩でエースのチョン・ジウォンとの友情と対決、ヒロインのシーヤオとの三角関係と友情、そして栄光と挫折と再起を描いてて、本当に色々なものが詰まりに詰まってる。そしてみんな素直で嫌味のない良いキャラをしているので、みんなを好きになる。特にやっぱり主人公格の二人が好きすぎて好きすぎて、童貞臭がぷんぷんするティエンは大好きで最後まで応援してたし、エディ・ポン演じるチウ・ミンは可愛すぎる。二人がイチャイチャふざけ合ってるシーンとか微笑ましすぎて最高だった。分厚い背中も最高。
栄光部分の前半はもう本当に最高のチームだし、わかりやすい敵役に面白い奴らがいるし、レースシーンもわかりやすく描かれてて珠玉の出来だと思った。挫折辺りの後半は、ちょっと長いと言うか、バンジーとかギャグにしてもちょっと長めでやり過ぎな感じだし、時間が飛び飛びでちょっと混乱したり、監督の娘とチョン・ジウォンとか、ちょっと出番があった謎のカメラマンの女性とか、放っておかれた未完の部分もちょこちょこあったりして、全てが完璧と言うわけではないと思うけど、本当に楽しい、愛すべき香港エンタメ映画だなって思いました。

クリミナルアフェア前までの、ひたすら銃と男の対決と奇妙な友情みたいの描いてた超硬派なダンテ・ラムも好きだけど、今回みたいのも本当に好き。待望のダンテ・ラム監督の新作を映画館で見れて幸せです。
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