よーだ育休準備中

メッセージのよーだ育休準備中のレビュー・感想・評価

メッセージ(2016年製作の映画)
4.0
突如、世界各地に《殻》と呼ばれる謎の宇宙船が出現した。12隻のうち、合衆国モンタナ上空に現れた1隻を調査するため、言語学者のLouise(Amy Adams)と理論物理学者のIan(Jeremy Renner)が野営地へと招集される。


◆異星人とのコミュニケーション

開始わずか5分で駆け巡る緊急速報。謎の宇宙船と宇宙人。正体も目的もわからないまま、彼らとの交渉が始まる。

彼らとの対談には制限があるものの、場所は限定的であり、必要最低限の説明で事足りる。観客も早々に《正体不明のエイリアン》との、《手探りのコミュニケーション》に没頭できる導入部分は完成度が高い。

国によって彼らとのコミュニケーション方法が異なっていた様子が明かされるのも面白い。(中国は麻雀を使用した。など。)


◆ヘプタポッド的思考による未来視

(以下、ネタバレを含みます。)

Louiseによって文字によるコミュニケーションへ進展した合衆国。しかしヘプタポッドの用いる文字は独特な《円環構造の表意文字》であった。

表音文字(アルファベット)を用いている事のみならず、独特の《時制》に苦しめられる。そういえば、中高生の頃、英語の授業で現在完了形とか、過去進行形とか、わっけわかんねぇと教室にハテナ飛ばしまくっていたなぁ笑

ヘプタポッドにとっての時制は《流れるものではない》。その思考法を会得したLouiseが状況を打開していく。《未来の回想》こそが伏線であり、解決の糸口は過去の記憶には無かった事が興味深い。因果の逆転になりそうな発想が堪らない。TENETを観た時と同じようなゾクゾク感!

悲嘆に暮れる結末を知った上で、その道を歩き始める決断をしたLouise。全体を通して薄暗いトーンと音響は、《未知との遭遇》のみならず《Louiseの選択》をも暗示していた様に感じる。

ラストの畳みかける様な映像もあり、視聴後は今までに感じたことの無い不思議な感覚に包まれた。今作が評価された事も頷ける。


◆non-zero-sum game

今作で物議を醸したのが《武器を提供する》というヘプタポッドの発言。
結局の所《武器=言語》であり、即ちヘプタポッド的思考による時制の解放と未来視であった。

言語も文化も異なる12箇所が情報共有をして結託しないといけませんよ=現代の世界の対立に対する批判とも取れる。

因果論を超越した時制の概念を持つヘプタポッド達、中国やロシア、スーダンに現れたのは、《宣戦布告をさせて、Louiseに止めさせる為》だったのでしょうか。だとしたら、社会主義国家のかませ犬感がすごい。

信頼関係がないと成り立ち難い《非ゼロ和》を謳いながらも、米国と敵対する国を煽っているようにも観て取れる。D.Villeneuve的思考を勉強してきまーす。