フラワーメイノラカ

メッセージのフラワーメイノラカのレビュー・感想・評価

メッセージ(2016年製作の映画)
3.8
突然現れた異星人の正体は、カントかハイデガーか。
認識論めいた哲学を巡るコミュニケーション。
謎の殻は12使徒として、地球上の人類にメッセージを語りつづけていた。

哲学には明るくないので、ベルクソンでもソシュールでも誰でもええか…と思ってしまったりする。実際、色々な思想がミックスされているんだろうけど。

一般の人からみれば、哲学者なんて宇宙人に等しい存在。
それはーーヴェンダースが尊敬する先人を"全てのかつての天使"と称えたようにーー映画作家にも同じことがいえるのではないだろうか。

映画も、単一の時間軸で進むわけではない。
ことに、クリストファー・ノーランに影響を受けているヴィルヌーヴ監督にとっては自明のことだろう。
演出、編集、演技。さまざまな人為的な手が無数に施され、歪な自然状態として映画はパッケージングされている。

本作における異星人は、まるでスクリーンの中にいるようだ。
時に彼らは第四の壁を破壊する。そして、ルイーズの頭蓋骨という壁を抜けて、脳内に思想を、"あなたの人生の物語"を注ぎ込む。
多層のメタシアターは、私の頭の中にも未整理のまま、意味を探して反覆しつづけている。