めしいらず

メッセージのめしいらずのレビュー・感想・評価

メッセージ(2016年製作の映画)
4.1
地球外生命体とのファーストコンタクト。彼らが人類に届けに来たメッセージとは。表意文字。円環する言語。円環する時間感覚。時間の概念が人類と違う異星人には、過去に起きたことも、未来に起こることも、今起きていることも、全てが手の中に揃っている。予め決まった運命。変えることはできない。彼らはそれを変えようと足掻いたりせず、絶望し嘆くこともなく、ただそのままを淡々と受け入れている。心配事はなくなり諍う理由がなくなる。後悔や恐怖からも解放される。自然と己の外から内へと視線が向かう。深まる分断で今にも壊れそうな人類に、全く別の概念を伝え団結を促すために異星人はやって来たのだった。人がそれぞれの内側を見つめた時に何を見つけるのか。主人公が見ていたのは愛する人との別離の身を削がれるような痛苦と、それさえ凌駕する彼らとの人生の陽だまりのように暖かな場面場面の言葉に尽くしがたい幸福感。運命は誰にとっても厳しいけれど、それを受け入れまいとすれば人生は更に難題になっていく。その中にも喜びを見つけ拾うことができるのか。愛の喜びと悲しみを知らない人生は無だ。心動かされるラストシーン。
モノリスを彷彿とさせるように神秘的な佇まいをまとった宇宙船登場シーンの、画の圧倒的なスケール感と美しさに思わず高揚してしまう。異星人や宇宙船を画面に登場させて尚、観る者に荒唐無稽と思わせない映画はそうそうあるものでない。音作りにも同じことが言えそう。終始一貫して静かなトーンが貫かれているのも、私たちに内省を促すようで好もしい。SF映画のマスターピースとして後世にきっと語り継がれるだろう一本だと思う。
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