Benito

メッセージのBenitoのレビュー・感想・評価

メッセージ(2016年製作の映画)
5.0
【 SFだけど哲学的で情緒溢れる物語 】

原題はArrival
原作はStory of Your Life
そして監督が「DUNE」「ブレラン2049」のドゥニ・ヴィルヌーヴ。

SFの体裁を取りながらも主役はエイリアンではなく、ひとりの女性。そのルイーズ・バンクス博士の心理深層ともいえる揺らぎ、不安、幸せ、哀しみを描いているドラマ。エイミー・アダムスの尊敬すべき演技、地球外生命体や宇宙船内などの音響デザイン、霧にかかった宇宙船を捉えた美しく静謐な撮影、ふたりの作曲家による音楽などが完璧に重なりあってる作品だと思う。

そして「2001年宇宙の旅」「惑星ソラリス」などのような哲学的テイストを漂わせ、「コンタクト」のように強い決意を持った女性を描いてるあたりが、自分の知的興奮を盛り上げてくれて好みな作品。


<劇伴>
哲学的な要素もあれば、全体的に情緒もあってその世界観を後押ししているのがふたりのコンポーザーによる劇伴だと思う。

・オープニングとエンディング
"On the Nature of Daylight"
by Max Richter (マックス・リヒター)

この美しすぎる、情緒溢れる、主人公の気持ちを代弁しているかのような曲は、既存曲で2004年に発表されていた作品。5つの弦楽器とミニムーグ(アナログシンセサイザー)のみの編成で、終始同じフレーズが繰り返されている。ミニマルながらもエモーショナルな気持ちにさせる魅力がある曲。だから映画にはぴったり。デカプリオの「シャッターアイランド」にも使われていたけど… *「メッセージ」のサントラには未収録 https://youtu.be/b_YHE4Sx-08


・それ以外のスコア
Jóhann Jóhannsson ヨハン・ヨハンソン

リヒターが使われたオープニングとエンディング以外を担当。まさにSF要素を出しつつも現代音楽的なミニマルなアプローチでミステリアスな雰囲気を出していて良かった。音楽というよりまさに映画の音を産み出してる。残念ながら彼は2018年2月にオーバードーズで早逝してしまった。2017年10月に公開されたヴィルヌーヴの「ブレラン2049」の劇伴担当を降板し、最終的にはハンス・ジマーになってしまった事も遠因にあるんじゃないかと、個人的には感じてしまった。blu-rayの特典でヨハンソンのサウンドメイキングが見れるけど緻密で実験的な試みをしていて驚かされた。
 
あとはクラシック曲が使われてた。
「ラッシュアワー」のハン総領事役を演じていたツィ・マーが今回は中国のシャン上将役だったけど彼の登場する重要な場面でドヴォルザークの"弦楽セレナーデ ホ長調 作品22 第4楽章ラルゲット" の一片が流れてる。*サントラ未収録


鑑賞記録
・劇場公開時(2017.5)
・ホームシアター 5.1ch (2022.9)
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