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メッセージのkrhのレビュー・感想・評価

メッセージ(2016年製作の映画)
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「未知」の概念の新鮮さ、それに対峙することを体感させられ、更に自分自身と向き合わされる、SFの醍醐味を静かながら存分に味わえる作品だった。

広大な草原と、(ばかうけ状の)戦艦がそこにそびえ立つ光景は大変に不可思議で美しかった。公開日から日が経っていたために小さいスクリーンでの鑑賞だったのが本当に残念。
重力描写も身体がふわっと浮くような感覚があり、観ているこちらも一緒になって「ええ〜っ!」と驚いてしまった。
未知と対峙する緊張感もさることながら、言語体系の新しさに対する驚きや、それをどう解明させていくかのカタルシスも大いにあり、先の展開をワクワクしながら観ることが出来た。

「過去を振り返るのと同じように未来を思い浮かべる」という感覚が、観ているこちらも疑似体験しているよう。時制のない言語を習得することで、侵食されるように思考まで時制が曖昧になっていく様子は、こちらまで段々苦しくなってくる。この先何が起こるかわかっていても、その道筋を辿る行動を選ぶか。最後の最後まで、未知との邂逅により自己の内面がぐいっと引っ張り出されるその描写がグッとくる。これぞサイファイ!と言いたくなるような大きな意義をもたせた素晴らしい作品だと思う。

言語学の権威だからといってそんなに多言語を流暢に話すことが出来るのか?とか、12のキーワードで時間などではなく個体数にフォーカスしてしまうのかだとか、差し込まれる回想が過去ではなく未来であることを示唆するヒントが分かり易すぎるとか、宇宙人なんならもう少し具体的に言ってやれやとか、将軍あっさり引き下がり過ぎとか、結局ピースカムズフロムダイアログなのか…等々気になる点はあったが、煩雑になり過ぎずに人の内面へ回帰させるためには必要だったのかも。
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