ニトー

メッセージのニトーのレビュー・感想・評価

メッセージ(2016年製作の映画)
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とりあえず簡単にまとめると面白かったです、はい。パンフレットの内容も、手帳サイズながら監督ほか役者含めたスタッフへのインタビューや評論家・ライター諸氏の解説なども入っていて充実していたので色々と理解の手助けになりました。まあ、最後までしっかり観ていれば内容そのものが分からないってことはないんですが、前情報なしで観ていくと途中で「え?」ってなりそうではありますよね。

なんたって映画の冒頭で劇中では到達しないルイーズ(エイミーアダムス演)の子どもの死までが描かれるのに、ルイーズがヘプ太=ポットくん(のび太くんみたいだな)の言語を学び彼らの時間認識の感覚を会得するまでルイーズに子どもがいる・いた描写なんてない。しかもイアン(ジェレミーレナー演)との会話の中で未婚であることが明かされるわけですが、そうなると「冒頭のルイーズの子どもの描写はなんだよ」って話になってくるわけですね。で、それこそがこの映画の話の重要なファクターの一つでもある「直線的でない時間」ということに繋がってくるわけですね。「直線的でない時間」というのは、要するに過去も未来も現在も等しく同時に認識するってこと(ぶっちゃけ人間がこういう認識を持つことって無理だと思うんですが、まあこの点に関しては後述しましょう)で、ヘプ太くんはそうやって時間というものを認識しています。簡単に言うと全裸の青いおっさんことドクターマンハッタンですね。彼のように超越的な力はない(少なくとも劇中でドクターマンハッタンのようなぶっ飛んだことはしない)んですが、ヘプ太は彼と同じ時間感覚を持っているわけです。で、もう一つキモとなるのが、その感覚を会得してしまうルイーズという人間の物語。ていうか、むしろこっちがメイン。

すっごい雑にまとめてしまうと、「ヘプタポットと同じ時間認識を獲得し、残酷な未来が待ち受けていると知ったとき、(ルイーズという)人間はどうするのか」って話だと思いますです。それとは別に人と人のコミュニケーションという点でも語れるとは思うのですが、自分は、というか監督も言っていますがルイーズの物語であるわけですし。

どうしてオーバーテクノロジーを持ったヘプタポットが人類に接触してくるのかというと、3000年後に地球人の助けが必要になるので、そのときに備えてコミュニケーションを取れるようにということなのですが、その助けが必要になる状況というものは具体的に明示されませんし、そもそもこの映画ではそこは重要視されていません。どことなくキューブリックっぽい画作りとか、サウンドデザインとか、エイミーアダムスの演技とか、いや全然文句ないくらい素晴らしかったですよ。あまりSFっぽくないテーマの話なのにちゃんとSFのフォーマットで、しかも従来のいわゆるジャンルとしてのSFではない作品としてウェルメイドな作品だと思います。本編140分らしいですけど、まったく退屈せずに最後まで楽しめましたし。
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