たつなみ

メッセージのたつなみのネタバレレビュー・内容・結末

メッセージ(2016年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の作家性に触れたくなり鑑賞。
観終わった後に大切な人を抱きしめたくなる様な、優しさと切なさに溢れた素晴らしい傑作!
少しずつ謎が解きほぐされて行くにつれ、じわじわと感動が込み上げてくる。

『ブレードランナー2049』と同じく、非常に哲学的な余韻を残す。
何度も観て味わい尽くしたい位、オールタイムベスト級の作品かもしれない。

時系列を持たない”ヘプタポッド”たちの言語を理解してゆく事により、『時間』『運命』という概念について考えさせられる。
ヘプタポッドと面会出来る時間の制約や、時限爆弾のタイマー。
『寿命』に代表される様に、人類側にはやたらと『制限時間』の表現が出てくる。

ところがルイーズが彼らの最後のメッセージを解読する事により、人は『時間』の概念から解き放たれる。
娘のループする名前(HANNAH)についてのエピソードがとても象徴的だ。

だが時間を乗り越える事が出来ても、死の運命を克服する事は出来ない。

ルイーズにとって娘の死を知りながら生きてゆくという選択は過酷かもしれないが、娘を抱きしめた手触りと共に確実にその『記憶』は残る。
記憶の中で彼女は何度でも娘に会いに行けるはずだ。
そうであって欲しい。

己の力を過信して短絡的に戦闘を仕掛けようとする中国がとてもリアルで面白い。
でもそれに各国が追従してしまう辺り、現代のパワーバランスを象徴している。
そんな中国が説得されて改心する所はなかなかスカッとした。
この件からして『人類はもっと分かり合えるはず』という願いも込められている。

『2049』と併せて観ると、このドゥニ・ヴィルヌーヴという監督はやはり『人間とは何か?』という深遠なテーマを描き続けている様に思う。
俄然他の作品も観てみたくなった。

【2017.11.6追記】
あれからずっとネット等でこの作品についてのレビューや解説を見ている。
その中で、岡田斗司夫氏の解説を見て気付かされた。
それは、ルイーズが冒頭から見ていた娘の『回想シーン』と思われたものは、よく考えたら過去ではなく、ずっと『未来の断片』を見ていたんだということ。
何で気づかなかったんだろう!

観客はルイーズとヘプタポッドの言語を理解してゆく過程を一緒に体験する事で、段々と物語の全容を知覚することになる。
何と映画的で計算し尽くされた作品なんだ!
岡田斗司夫氏のネタバレ動画↓
https://youtu.be/dODyfumgz9E