chiakihayashi

メッセージのchiakihayashiのネタバレレビュー・内容・結末

メッセージ(2016年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

@DVD

プロットはふたつ。

地球外生命体が同時に地球の12箇所に出現する。そのうちのアメリカでエイリアンとのコミュニケーションを図る言語学者がヒロイン。

AIのディープラーニング機能に助けられながら、ヒロインはエイリアンの表意文字を少しずつ読み解きつつ、コミュニケーションを積み重ねていくも、「武器」というコトバをめぐって、大国である中国を中心に各国間に齟齬が生じ、あわや地球大の核戦争か、という危機に。

地球外生命体が地球を訪れたのは、3000年後に彼女/彼ら(?)の星が人類の手助けを必要とするため、それまでに人類が滅びてしまわないようにするという目的があったのだが、地球外生命体とのコンタクトという壮大な混乱と危機において初めて、かろうじて地球内国家間の共同作業が実現するという第一のプロットには、思わず苦い笑いが起きた。

もうひとつのプロットは、地球外生命体の〝言語〟を習得するにつれて、ヒロインは彼女/彼ら(?)と同じく、過去、現在、未来と時間が直線的に流れるのではなく、言わば過去も現在も未来もない/同時に存在するコスモスを生きる身体となる(これは必ずしも〝言語〟による世界の構築という面だけではなく、自分の表情を地球外生命体に見せなくてはおよそコミュニケーションなど成立しないとヒロインが防護服を脱ぎ捨てる場面や単独で宇宙船の中に入りこみ、霧のような〝空気〟を浴びるシーンに象徴されているように、身体感覚すなわち無意識を変える契機があってこそ、のことではなかったか)。

その結果、ヒロインは未来において最愛の娘とパートナーを失うことになると明瞭に理解しつつ、その自らの人生の一瞬一瞬を十全に愛おしむという厳しい選択と覚悟をする・・・・・・。それは言わば、期せずして地球の〝救世主〟となった彼女が支払わねばならない代償のようだ。逆に言えば、それだけの力を持たずして〝救世主〟の働きをすることはできないということでもあろう。

人は生まれ、人は死ぬ。新しい生命が生まれ、その生命が消えても、かつその生命を生んだ生命が消えても、また、新たに生命は生まれてくる−−−−その輪廻を受け容れられるのは、やはり生命を孕み産み出す女性の身体でなければならなかった。だからこのSFの主人公は女性なのだ。

映画館のスクリーンで見るべき作品だったけれど、たぶん、1度見たくらいでは理解できなかったと想うので、DVDでの鑑賞はオススメ。
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