あーさん

メッセージのあーさんのレビュー・感想・評価

メッセージ(2016年製作の映画)
4.3
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品は初めて。
難解だとかテーマが重く、覚悟して観なければ…という自分で勝手に設けたハードルの高さからなかなか挑戦できなかった。
映画館での鑑賞を見逃し、新作はよっぽどでないと借りないのだが
早速レンタルしてくる。

いやぁ、DVDで観て良かった。。
頭が論理的にできていないので、メモを取りながらでないとレビューは書けなかったかも…。

しかし、今作のスゴイところはそんな枝葉のところにこだわるのでなくシンプルな"メッセージ"がどーんと大きくあって、それを取り巻くように哲学的な問いや政治的な問題、人種の壁、家族問題、果ては宇宙という大きな枠の中での時間についての概念。。様々なことが絡まり合って作品として成り立っているところである。
かの名作"インター・ステラー"では要所要所感動したものの、SFが苦手な私にはそのパーツが緻密すぎて?感動が薄れてしまう、という事態に。それ故にあまり好印象を持てなかったのだが、今作は違った。

今作に関して、監督は多分こう受け取ってほしいという作品に込めた"メッセージ"はあったと思うが、基本的には自由に受け取っていいんじゃないかなと思ったので個人的解釈を。

ルイーズ(エイミー・アダムス)は"愛"の象徴だと私は感じた。
愛=自分以外の他者を受け入れ、理解しようと思いやること…かな?
彼女は言語学者であり、女性である。
突如、地球上の12の地域にやって来た地球外生命体=ヘプタポッド。ルイーズは彼らとの意思疎通を軍の要請により協力することになる。
彼女の中に彼らが最初から敵に違いないという概念はない。
しかし、セッションと呼ばれる交渉もなかなか進まず、苛立ちを隠せない状況。。
そんな時、ルイーズが自分の生命を危機に晒してまで相手に思いを伝えようとするシーンには驚いた。理屈やルールではなく、熱い思いがルイーズを突き動かしている。だから、主人公は女性でないといけなかった。

同じように召集されたイアン(ジェレミー・レナー)は「文明の基盤は科学だ」と信じて疑わない男性の理論物理学者である。
最初の方こそ二数列法だとかフィボナッチ数列…だとか難しいことを言っていたけれど、だんだんルイーズのやり方に協力してくれるように。
もちろん、今の時代科学は人類の発展に欠かせないものだが、乱暴に言ってしまえば極端な話、発展をやめても人間は生きていける。
しかし、コミュニケーションは人間が生きていくのに絶対に欠かせないもの。「お腹が空いたよ〜」と赤ちゃんがお母さんに泣いて知らせる、そこから始まるのだ。
赤ちゃんをやったことがない人はいないだろう。泣くことができなければ、赤ちゃんは死んでしまう。
生命の維持には数列でなく伝える、という行為が重要になってくる。

"自分達がわからないことは怖い"。
地球上の12の地域に同じような宇宙船がやって来て、それぞれヘプタポッドとの交信を試みている。
"地球外生命体の到来"をどう解釈するのか?まず対話することに心を砕くのか?対話できないもどかしさから業を煮やして行動に移すのか?相手がどう出るかわからないから先制攻撃するのか?

"武器"という言葉。
単純に訳すと、戦うための道具?
そう、戦うとは傷つけあったり殺しあったりするだけではない。
優しさを武器に、とかかわいらしさを武器に、という言い方もできる。
知性を、とも。。
武器の本当の意味とは?

シリアスな現場にもユーモアが散りばめられているのは、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督ならではなのかな。2体の地球外生命体を"アボットとコストロ"と名付けたり(アニメの"助けてーアボット〜"とは関係ないのかな?笑)、なぜそれらの12の地域が選ばれたのか?という問いに"シーナ・イーストンの曲がヒットしている地域だから"とか笑 気が抜ける〜

そして、表意文字の美しさにはため息。
あんな風に文字を表すという発想。。
素晴らしい!
見ているだけでうっとりした。

その表意文字(ロゴグラム)には時制も、思考さえないらしい…?どういうこと?
外国語を学ぶと考え方が変わる、という。
確かに、日本語は主語を曖昧にするのが特徴的である。自己主張しない国民性を表しているのか?
英語は動詞が主語のすぐ後に来る、日本語は最後。結論をはっきりさせないから?

ちょっと難しかったのは、時制について。
ルイーズの過去、現在、未来の出来事がうまく整理できず、最初は戸惑った。
時制がないという概念について理解するのに時間がかかった。
まさかラストシーンへの出来事もそれが関わっていたとは。。
そこさえ納得できれば、スッと腑に落ちることができた。

運命が変えられるなんて、思ってはいけないのかな。
自分の置かれている場所で、起こったことを受け入れ、そこから始める、私が最近よく思っていることと同じだ。

ルイーズの意思の強さ、人間としての器の大きさに感じ入る。
それは、生きとし生けるものの母になり得る女性だからこその強さなのではないかと私は思った。

エイミー・アダムスの演技に終始魅せられた。。








*途中まで一緒に観ていた大学生の息子が横でフィボナッチ数列の説明をしようとする→いらんから。
ルイーズの生命の危機を侵しての行為にサクッと「あり得ない」と言う時点で"あんたはドゥニ・ヴィルヌーヴ監督からのメッセージは受け取れません!"と思う母であった。。

実際にこんな事あるわけない、とか矛盾点を考えてしまう段階で無理だから!!

あくまでも
"メッセージ"を受け取って!







追記

レビューを書いてからの方がじわじわと色んなことを考えさせられる作品。。
特に、音楽については物語の展開や言葉についていくのに必死で、味わう余裕がなかった。
アカデミー音響編集賞受賞ということなのでYouTubeで聴いてみたら、どハマりしてしまった。
"On the Nature of Daylight"
ヴァイオリンの物哀しい音色が心に沁みる。サントラ、欲しい。。
また特典映像に音声の方のインタビューがあったので視聴してみた。例えば、ヘプタポッドの声はどんな風にしようか、あちこちから音を収集。
3日間山を歩き回ってムクドリの声を集めたり、とにかくニュージーランド中を探したという。
"エリマキミツスイ"という低い声の鳥の音声を使っているらしいが、まさか鳥の声だとは思わなかった。
"息"を表すにはライスペーパーの中に水を入れて動かして肺の音にしたり、それにラクダが喉を鳴らす音を加えたり…色んなアイディアが使われている。面白い!
音声の仕事って深いなぁ。。
坂本龍一のドキュメンタリーでも山に入って音を集めるシーンがあったけれど、"レヴェナント"の音声も素晴らしかった。
自然の音、、普段から耳にしている音を重ねて作るから、耳なじみが良いのだろうな。

本当に奥が深くて、どんどん掘り下げてみたくなる。


故に、スコア上げました♫