しげのかいり

メッセージのしげのかいりのレビュー・感想・評価

メッセージ(2016年製作の映画)
3.0
ぼくが昔『涼宮ハルヒの消失』が好きだったことを思い出させてくれた作品である。中学生だったか、あの時は雪降り積もる中で一人たたずむ長門有希の姿が単に美しいとだけ思っていたが、今思うとあの作品はキョンが日頃からウザいと言っていたハルヒがいる世界を自発的に救う話ではなかったか。青春という過ぎ去る世界の中の美しさ。キョンは長門有希と一緒にいる静かな生活ではなく前者の青春を選ぶ。そういう点で思い返してみるとあの長門有希の姿は加藤泰の『色丹博徒』で菅原文太に一人残された富司純子を思わせる。あの深々と降り積もる雪と彼らの大騒ぎを無視して淡々と日常生活を営むモブが『消失』ではいい味になっているのだが、『メッセージ』にはそういうのがなく、情感をあまり感じられなかった。しかし『消失』を思い出させてくれた点でよかった作品である。まあただいま『消失』を観直すかといったらそうでもない。やっぱりあれはクソつまらない本編と、イライラしたエンドレスエイトがあったからこそ長門に共感する作品なのである。思い出は思い出のまま、過ぎ去った青春は元には戻らない。