サピア=ウォーフ仮説という懐メロに依拠するのは誤りであったろう。無時制の言語=認知空間を持つものと規定する強い言語相対論で彼らを理解することはまずもって不能に陥ってしまう。そこには「理解」という回路がすでにしてない。彼らはすでに「知ってある」のだから。そしてまた無時制であることと、無時空に生きることが紐付くことはなく。その紐付かなさを際立たせるものとして、「3000年後に起きることを変えよう」としてしまうヘプタポッドと、「数年後に起きることを受け入れざる」を得ないルイーズという狂言回しが必要とされる。宿命と運命を反転させ合うゼロサムゲーム。