ラウぺ

メッセージのラウぺのレビュー・感想・評価

メッセージ(2016年製作の映画)
4.3
世界中に突如現れた柿の種か笹かまぼこ状の宇宙船(監督によると「ばかうけ」が元ネタとのこと)とのファーストコンタクトを描くこの作品、中のイカ型異星人とのコミュニケーションを任された女性言語学者がイカにその方法を見出すか?という、一見王道を行くSF大作のように見えますが、この映画にはある仕掛けがあって、それが明らかになると、この作品の本当の主題が明らかになる、というもの。

世界中の12か所に現れた宇宙船に各国が対処するうち、それぞれの思惑や立場の違いから協力体制が崩壊し、中には敵対的対応に傾くところも現れる・・・という話はどうしてもファーストコンタクトもの的に使い古されたネタであり、その先の展開に不安を覚えつつ、イカ星人とのコミュニケーション方法については知的好奇心にたいする刺激とその動向から目を離せない展開となりますが、旧来からのSF大作的な、人類の右往左往の様子を期待する向きにはちょっと肩透かしを食らうかもしれません。
しかし、先にも述べたように、この映画はそういうところに主題があるわけではありません。
仕掛けが分かって劇中でたびたび現れる、あるイメージについての意味が明らかになると、事件の推移という表層的展開などどうでもよくなってしまうのです。
そこを好意的に見ることのできる人には非常に心に残る映画といえると思います。

映画の冒頭、マックス・リヒターの「On the Nature of Daylight」という曲が流れますが、この曲はマーティン・スコセッシの「シャッター・アイランド」でも使われたかなり印象的な音楽で、その突出した印象から初めは違和感を覚えるものの、これの重みも最後まで見終わってみると納得できるようになっています。

メインの楽曲は「ボーダーライン」でも担当しているヨハン・ヨハンソンが作曲していますが、マックス・リヒターのこの曲が印象的に使われたおかげでアカデミー賞の作曲賞のノミネートから外されたとのこと。
ヨハン・ヨハンソンの曲自体は弦楽と声によるミニマル・ミュージック的なこれまた印象的な音楽でしたが、映画全体を通してみると確かに「On the Nature of Daylight」のインパクトは絶大で、この取り下げは致し方ないと思われました。
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