優しいアロエ

メッセージの優しいアロエのレビュー・感想・評価

メッセージ(2016年製作の映画)
4.5
【過去鑑賞作品 19】

 『未知との遭遇』を鑑賞し、無性に見直したくなった。ケージに入れた小鳥を安全確認に利用するといったオマージュはもちろん、未知の生命体と対峙する人々には緊張や恐怖、焦りの片隅に、どこか魅了され、探究心が芽生えているところが、今作が『未知との遭遇』に近いと感じた所以だ。

 「未知の者とのコンタクト」という主題を根幹に、「国家間の団結」という社会的なテーマと「現実を受け入れた真の愛」という人間的なテーマを描いた今作。しかも、言語学(サピア=ウォーフの仮説)と物理学(相対性理論?、ブロック宇宙説?)という関係なさげなモチーフまで絡み合っている。

 今作が素晴らしいのは、これだけ多くの要素を含みながら、それらを見事に圧縮し、一見シンプルな映画に感じてしまうくらいにまとめてあげているところだと思う。だから興味深いストーリーに終始釘付けになりながらも、しっかりとキャラの心情や美しい映像・音楽を感じとることができる。

 また、ヨハン・ヨハンソンの音楽は相変わらずヴィルヌーブ作品をより素晴らしいものへと引き上げており、朝鮮の宮廷音楽を思わせる“First Encounter”や女性のボーカルを重ねた “Heptapod B”が印象深い。ちなみに冒頭と末尾に流れる一定のメロディを繰り返した音楽は、マックス・リヒターという作曲家の“On the Nature of Daylight”という既成曲だ。

 Blu-rayに含まれる映像特典も超興味深いものになっている。特に原作者テッド・チャンの解説は必見で、時間の流れがないという仮説を何となくわかったつもりの我々にさらなる深い理解を与えてくれる(例えば、過去のことは記憶にあるのに、未来のことは記憶にないのはなぜ?といった疑問への回答)。劇場で観たきりの人にもお勧め。
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