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明日はないのSNのレビュー・感想・評価

明日はない(1939年製作の映画)
4.1
「善良な市民は目を背けたくなるような連中のあいだで、夜毎に体験をしたことから受けたパリの印象によって、この映画は生まれた。そこに生きる女と、ヒモと呼ばれる男の世界に、私はいつも強く心を惹かれたのだった。そして、いつもこのテーマに捧げる映画を撮れないものかと夢見ていた。シナリオはさながら現代風のモーパッサンのようになるだろう」(オフュルス談)

不幸な結婚によって多額の負債を抱え、ピガールでダンサーをしながら、女手一つで幼い息子を育てる主人公エブリーヌ・モーラン。彼女のもとに突如として昔の恋人のカナダ人医師が現れる。そんな男に惹かれながらも、知られたくはない真実を懸命に隠そうとする…。
オフュルス初期の作品。夜、常に夜である。絶望的な雰囲気と常に薄暗い夜のムードが40年代のフランス映画に通底するリアリズムを強く感じる。その効果からなのか、どこまでいっても朝が来ない(明日がない)彼女の雁字搦めな状況を暗示させる。
また、この映画は終盤まで驚くべき速さで進んでいく。理解するよりも先に切り替わっていく展開のスピードが、妙なカタルシスを拒み、それがもっとも肝要な場面(この映画の唯一の救いといってもいい)の長回しを際立てる。
そして、最後の別れのシークエンス(列車)の素晴らしさは筆舌に尽くしがたいものがある。
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