CHEBUNBUN

アントマン&ワスプのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

アントマン&ワスプ(2018年製作の映画)
2.0
【今回ばかりはエンドロールで立たないで!】
ここ数年のMARVELは、『アベンジャーズ』に向けていかに時系列を合わせていくのか、ポリティカル・コレクトネスをいかに保つかに執着しており、頭でっかちになりがちだ。もちろん、MARVELは政治的コミックであることは百も承知だ。しかしながら、短期間で、こうもハードな内容が続くと、正直疲れてしまう。ブンブンも、最近のMARVEL映画はできれば避けたいなと思う。しかし、強い引力によって、またしても観てしまった。

今回のMARVEL映画『アントマン&ワスプ』はそんな我々映画ファンを考慮してか、非常に箸休めな内容となっている。ジェンダーがとか人種がとか政治が!といったことを声高らかにに叫ぶ訳でもなく、『アベンジャーズ4』に向けての伏線張りに執着するわけでもなく(これについては後述)。気楽に観ることができる。

キャプテン・アメリカの味方をし、『シビル・ウォー』でアイアンマン陣営と戦った末に、自宅軟禁となったスコット。彼の軟禁解除数日前が舞台だ。愛する娘の為に、友人と一緒にアントマンごっこをして楽しんでいる。ここ最近のMARVEL映画にない平和で微笑ましい光景が広がっている。しかし、そんな日々はハンク・ピムとその娘ホープ・ヴァン・ダインに誘拐されたことで変わる。原子サイズまで縮小し、生き絶えたと思われたピムの母が生きているとのこと。彼女を救助するために、量子トンネルを製造中で、その部品を集めるために手伝って欲しいとのことだった。こうして、再びサイズチェンジアクションが幕を開く。

前作でキャラクター説明が一通り終わっているため、その分サイズアクションに時間が割けるので、従来の映画では観ることができないヴィジュアルを余すことなく描いている。『ミクロの決死圏』の世界よりも、ミクロな世界。常識の範疇を超えた不思議な世界から、縮小&巨大化の反動で敵を蹴散らす姿など、10年前だったら観ることのできないような映像が立て続けに画面から飛び出してきます。しかも、縮小&巨大化アクションに関しては、本当に縮小&巨大化しているのではと思うほどリアルだ。シームレスにヌルヌルとサイズチェンジが行われる姿を観ると、改めてVFXの進歩に興奮します。

ただ、『アントマン&ワスプ』は『アイアンマン』以前のMARVEL映画のようなライトな作りになっている。頭を空っぽにして楽しめるポップコーンムービーになっている為、結構退屈してしまった。敵のゴースト。悲惨な過去を持ち、いくらでも魅力的なキャラクターにできるはずなのだが、中途半端にエモく、中途半端に狂気だ。仮面ライダーに出てきそうなヴィジュアル、ゴーストの名に相応しい、消えては現れを繰り返す姿こそカッコいいのだが、ヴィランとしての魅力に欠けるところがあった。また物語も、お宝争奪戦になっているのだが、最近のMARVEL映画が《死の薫り》をアクションに匂わせるので感覚が麻痺してしまっている為、全く緊迫感を感じない。ただただじゃれあっているようにしか見えず、興ざめしてしまった。これは、映画が悪いのではない。ハード過ぎるアメコミ映画に感覚が麻痺してしまい、単純な冒険活劇に退屈さを感じてしまっただけだろう。

さて、MARVEL映画といえば、毎回エンドロール観るか問題で論争を呼ぶ。最近では、映画の上映前に「エンドロールまで観よう」というメッセージが表示される。MARVEL映画では毎回エンドロールで1分程度の特別映像が流れる。後の作品の伏線が張られてたりする。ブンブンは余程のことがない限りエンドロールは最後まで観るのだが、MARVEL映画のエンドロールまで鑑賞の強要にはあまり好感を抱かない。というのもその特別映像って割と毎回どうでもよくてガッカリするからだ。海外では、エンドロールで退場するのはごくありふれた光景故に、「人に迷惑をかけなければ途中退出してもいいのでは?」と思ってしまう。

しかし、今回ばかりはエンドロールを観て欲しい。お手洗いに行きたい人もグッとこらえて欲しい。あれだけ、他のシリーズ作と絡まないように物語が進み、単純な冒険活劇として描いてきた『アントマン&ワスプ』が最後に衝撃的な刃を魅せるのだ。このショッキングなラストは、MARVELエンドロール史上トップレベルに観る価値があります。なので、いつもエンドロールで帰ってしまう方、是非今回は劇場退場をグッとこらえてください。
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