サマセット7

リメンバー・ミーのサマセット7のレビュー・感想・評価

リメンバー・ミー(2017年製作の映画)
4.0
監督は「トイストーリー3」のリー・アンクリッチ。
脚本はメキシコ系のアニメーター、エイドリアン・モリーナ。

[あらすじ]
メキシコ、サンタセシリアにて、曽祖父が音楽のために家族を捨てたことから、音楽を禁忌とする一家に生まれたミゲルは、密かに音楽家になりたいと願っていた。
年に一度先祖を迎えるお祭り「死者の日」の舞台で演奏するため、ミゲルは伝説の音楽家デラクルスのお墓に祀られたギターを盗んでしまうが、その結果、呪いを受け、死者の世界に入り込んでしまう!
生者の世界に戻るには、先祖から許しを得る必要があるという!
ミゲルは、生者の世界に戻るため、死者ヘクターと共に曽祖父を探すことになるのだが…。

[情報]
ピクサー・アニメーション・スタジオ製作による19作目の長編アニメーション作品。

ピクサーは、今作で挑戦的な試みを幾つもしている。
メキシコを舞台にして、メキシコ文化を全面的に展開。
死者の国を描いて、後半、キャラクターのほとんどがドクロ!!
そして、音楽がストーリーおよび演出において、極めて重要な役割を担う、音楽劇でもある。

監督に、傑作「トイストーリー3」のリー・アンコリッチを起用しつつ、共同監督兼脚本には、メキシコ系のエイドリアン・モリーナを抜擢。
制作には過去最大級の時間をかけ、メキシコ文化を徹底的にリサーチした。
その結果、メキシコ国内でピクサー作品史上最大のヒットとなった。

原題COCOは、作中の登場人物(曽祖母)の名前から。

ジャンルは、ファンタジー・アドベンチャー。
音楽劇、家族ドラマ、コメディの要素を色濃く含む。

ストーリーは、少年ミゲルが、死者の国に入ってしまい、死者ヘクターや曽祖母イメルダらの助けを借りて、生者の国への帰還を目指す、というもの。
いわゆる、"逝きて還りし"物語である(ドヤ)。

製作費1億7500万ドル、興収8億ドル超。メガヒットとなった。
今作は、批評家、一般の映画通の両方から絶賛されている。
アカデミー賞長編アニメーション賞、歌曲賞を受賞。

[見どころ]
全編カラフル&エモーショナル!!
活き活きと描かれるメキシカンカルチャー!!
溢れる、ドクロギャグ!!
生者に忘れられると真の死を迎えるという、秀逸な設定!!
二転三転するストーリー展開!!
名曲「リメンバーミー」!!
ラストの感動!!!

[感想]
これぞ、ピクサー・クオリティ!!

まずは、細かいところのこだわりが、とても楽しい作品だ。
サンダル叩き!
メキシカン・ヘアレス・ドッグ!
名は死者の国に行くに相応しく、ダンテ!!
死者の国の通関!!
実在のメキシコの著名人!!
CGドクロが奏でる、リアルなギター使い!!
花火!マリーゴールド!アレブリヘ!!
メキシコについてほとんど知らない私でも、敬意が伝わってくる。

全編ミュージカルにせず、要所に音楽を用いるバランスが好ましい。
楽曲もいずれもハイクオリティで楽しい。
リメンバーミーも良いが、ウン・ポコ・ロコも好きだ。

基本的に陽気なラテン系コメディスタイルなだけに、不意に訪れる悲哀にハッとさせられる。
ヘクターの友人の顛末からミゲルと観客が「真の死」を理解する件は、歌の良さもあって、名シーンである。

プロットの捻りも含めたシナリオの完成度は、さすがピクサー。
前半の何気ない演出が、後半、異なるニュアンスで効いてくる伏線回収は、もはや名人芸だ。

やはり、今作を強く印象づけるのは、終盤の感動シーンだろう。
多くは語るまい。
心動かされること間違いない。

[テーマ考]
今作のテーマは、広く、深い。
死、先祖、家族、夢、記憶の中に生き続けること、歌うことなどなど、様々な切り口で語ることが可能だろう。

生者に忘れられた時、真の死が訪れる、という設定は、秀逸だが、よくよく考えてみると、なかなか恐ろしい話でもある。
何だか、物理法則から、他人の記憶に残ることを強要されているような錯覚に陥りそうになる。
天涯孤独に安らぎはないのか!?
が、もちろんそんなことが言いたい作品ではあるまい。
深読みはし過ぎないが吉だ。
故人を忘れずに、覚えていよう、祖父や祖母、父や母は存命のうちに大切にしよう、というのが、この設定から導かれる、素直なメッセージだろう。

伝えたいことは、生きているうちに伝えるのが望ましい。死んでからでは遅いのだから。

[まとめ]
ピクサーのチャレンジ精神漲るメキシカン・音楽・ドクロファンタジーにして、10年代屈指の傑作。
ダンテのアニメーションがとても良い。
ダランと垂らした舌がクセになる。