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リメンバー・ミーのTSのレビュー・感想・評価

リメンバー・ミー(2017年製作の映画)
4.3
【人が死ぬ時】90点
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監督:リー・アンクリッチ/エイドリ
アン・モリーナ
製作国:アメリカ
ジャンル:アニメ
収録時間:105分
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2018年劇場鑑賞24本目。
思えばピクサーによる完全新作は『アーロと少年』以来2年ぶり。『アーロと少年』がそこまでヒットしなかったからか、この2年はカーズやドリーなどの続編を出し弱腰になり気味であったピクサーでありましたが、今作で復活したように思えました。今作は紛れもなく傑作であり、ピクサーの巧みな手腕が生かされている作品であるとも感じました。たかがアニメ、されどアニメ。これ程素晴らしいメッセージ性を含んでくるのに脱帽せざるを得ないです。

メキシコに住む12歳の少年ミゲル。ミゲルの高祖父は音楽家になる夢を持ち、娘のココと妻のイメルダを捨ててどこかに行ってしまったことから、ミゲルのリヴェラ家は音楽禁止となっていたのだが。。

高祖父なんて言葉、早々使わないですがつまりひいひい爺さんのことです。今作は一貫して家族の大切さ、先祖の大切さを伝えています。ところで質問ですが、みなさんは自分の先祖をどこまで覚えてるでしょうか。僕も頑張っても曽祖父母までしか思い出せません。高祖父母に関しては曽祖父母や祖父母が覚えていると思いますがこの方々が亡くなればどうなのでしょうか。現代の我々はよく写真に写る時代を生きているので、もしかしたら数世代に渡りその容姿がどういうのだったか伝わるのかもしれませんが、過去になるとそうはいきません。立派な家系に生まれたのならば家系を記した文献などあるのかもしれませんが、普通の家系ではまず残っていないでしょう。何が言いたいのかというと、歴史人物の家系ならともかく、一般の人々の数世代前の人に関しては一切記憶されていないのです。

人はいつ死ぬか。ワンピースのヒルルクが放った言葉を思い出されました。人は二度死ぬ。一度目は肉体が滅びる時、二度目は人々から忘れ去られる時です。今作はそういう死に纏わる神秘的とさえ言える部分を面白く、そして感動的に描いています。メキシコには死者の日というものがあり、その日に死者が現世に帰ってくるというもの。日本にもお盆という文化があるため、日本人にはわかりやすい設定かもしれません。その現世と死の世界をひょんなことから往き来する少年ミゲル。彼は音楽に夢中になり、その音楽を禁止する家族を憎みます。加えて祭壇に写真を飾る文化も煙たがります。

しかし、死者の世界に行ってから自分の様々な勘違いに気づき変わっていきます。ピクサー、ディズニーの作品に慣れている方からすると誰がヴィランとなるのかは容易に予想出来るのですが、やはりラストの展開は予想の斜め上を行きます。いや、予想は出来るのですが、そうか、こういうことを最終的に伝えたかったのか!と最終的に深く納得させられるのです。
我々は人を忘れてはいけない。忘れ去られた時がその人の真の死であるため、その記憶のバトンは繋げなければならない。逆に言えば繋げていけばその人は死なないのです。従って、歴史に名を残す人物は生き続けているといっても良いのかもしれません。そして死者の世界があるのかどうかは定かではありませんが、記憶のバトンを繋げることで死者と生者が一体となる感覚が生まれるのだと思います。そうなると、死後の世界も悪いものではない、死なんて怖くない、という楽観的な思想も生まれてくるでしょう。人はいつか死ぬのだから死に怯えていてはいけない。そう捉えて割り切って、生きてる内の人生をより楽しいものにしようとさえ思えてきます。

改めて死というものは不思議なものです。死後の世界なんて誰もわからない。わからないし、もしかしたら今作が描いたような世界も広がっているのかもしれません。いや、全くないのかもしれません。メキシコの死者の日や日本のお盆というのは単なる生者の自己満に過ぎないのかもしれません。ただし真相はわからない。何故か。事実上、死んで生き返ってあちらの体験を話しかつ、あちらの世界があるというのを証明した人はいないからです。そういう死生観諸々に関してもつくづく考えさせられる作品です。

ガイコツキャラが多いですから小さい子は少し怖がるかも。しかし、相変わらずの美麗なグラフィックですし、ある種の「希望」も内在しているので是非子どもから見ていただきたい春休み必見の映画であると思えました。邦題も珍しく秀逸。原題も良いのですがストレートに伝わるのは今回に関しては邦題でしょう。

私を忘れないで……

自分も、人に忘れられないような人生を歩んでいきたいと思いました。
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