しの

リメンバー・ミーのしののレビュー・感想・評価

リメンバー・ミー(2017年製作の映画)
4.6
まさかこんなにも明るく楽しく希望に満ちた物語にしてくるとは! 自分のルーツを探し、先祖代々繋がる絆を確認し、それをいつまでも忘れないこと。その尊さが、映像的なアイデア満載の「死者の国」、そして音楽によって、楽しく雄弁に語られる。お手本のようなエンタメ。

いい意味で裏切られた。死というモチーフに引きずられ、ゴリゴリの泣かせ系にしてくるかと思いきや、なんと真逆。「死者の国」のビジュアルは美しく、死者たちの生活は楽しい。音楽にのせ、冒険、コメディ、ミステリーと盛り盛りで、家族という一点に突き進む。希望に満ちている。

死者に関する諸々のアイデアがとんでもなく新鮮で秀逸。死者がこちらの世界に来るには?死者の国での生活は?死者のその後は?…とこういう、我々がふだん死者について想像するあれこれを視覚化し、それを物語のギミックに活用することで、彼らを想い続けることの意味を実感できる。

音楽と家族、どちらを取るのか…という話かと思いきや、ちょっと違った。選択というより、それらを等号で結ぶ話だった。本作において音楽はルーツであり、家族の繋がりなのだ。ここら辺、ちょっと誤魔化された感もあるが、それは「自分の中に湧き上がるものには、必ず理由があるのではないか」という希望でもある。

死が悲しいなんてわかってる。だから、本作はその先を描く。美しく楽しいビジュアルであえて楽観的に、しかし大切なことは切なく。繋がり続ける家族に希望を見出し、それを音楽で表現する。

何度も言うが、本作が素晴らしいのは、作品の楽しさがテーマに直結してるからだ。映画を楽しんでいるうちに、先祖や家族、死者との繋がりを実感できる。それも非常にポジティブな感覚として。楽観にちゃんと実感があるのだ。エンタメのお手本なのではないか。


「家族か音楽か」の答えとは(※リンク先ネタバレ有)
https://fse.tw/45e6Y#all
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