私を忘れないで。
俺のことを忘れないで。
贅沢かもしれないけど、時たま思い出して。
実際良いことばかりじゃなかったし、良い思い出なんて、一つも君は覚えていないかもしれないけども。
僕のことを忘れないで。
いつか一人にならなきゃならない時の為に。
今、面と向かって愛してると言えたなら、それでもきっと足りないし、せめてさよならを添えてなんて。
私のことを忘れないで。
あんなにたくさん抱きしめたのに足りない。
思い出なんて広く開けたその目の前の世界のほんの一部でいい。ただ今も貴方の傍に居るよ、それだけ。
私はきっと忘れないよ。
あの時の夢のようには過ぎていかない世界でも、きつく抱きしめられた記憶も、あの日一緒に歩いた小さな坂道、真っ赤な夕焼け、緩い光に反射する葉っぱ、小さな石ころ、遠くから流れる小さな歌も、全部ぐちゃぐちゃの大事な箱の中に入れて、いつでもあなたが大好きだった小さな子どもの頃の私のように、あなたの胸に抱きつく準備なんてとっくに出来てるんだから。
私を忘れないで。
