ま2だ

リメンバー・ミーのま2だのレビュー・感想・評価

リメンバー・ミー(2017年製作の映画)
4.3
リメンバー・ミー、観賞。

原題は"Coco"、そしてまたの名をおばあちゃん子殺し。娘であり母であり祖母であり……というある一族のストリングスの絶妙なポイントに位置する曾祖母ママ・ココの名をタイトルに据えるあたりに、映画の狙いがはっきり読み取れる。

母(本作では意図的に影が薄い)でも祖母ではなく曾祖母なのが絶妙で、その人生が圧縮されたような彼女のモデリング、佇まいを見るだけで、おばあちゃん子としては、早くも鼻の奥がツンとする。

アカデミー主題歌賞を獲得した楽曲「リメンバー・ミー」を軸に物語は進む。音楽と家族の絆というテーマに沿いつつ、ヴィランの存在をくるりと、あくまでもライトなミステリー仕立てで転がしてみせる手腕はまさにウェルメイドと呼ぶに相応しい。

その要所要所で歌われ演奏される「リメンバー・ミー」が次第に意味を変え、クライマックスで涙腺を決壊させる構造にも唸るしかない。

画面内の色彩のボリュームをコントロールする設計も非常に巧みで、原色が氾濫するダイナミズムとわかりやすさを見事に両立していると思う。

ただ、個人的に期待していたマジックリアリズム的な不穏さや得体の知れなさ、不条理さ、畏れなどのラテン文学的要素はある程度意識的に取り除かれていて、死者の国の表現もザ・ピクサー的、メキシカンなズートピアというかなり整理されたものになっていてそこは物足りなさが残る。

この整理され隅々まで刈り込まれた感覚は美術のみならず脚本にも感じられ、主人公ミゲルの足取りのように、全てがテーマに対して一目散に疾走している印象を受ける。

もう少しテンポを落として、余白や遊びの部分を描くことで映画世界のフレーム外の広がりを感じることができたのではないだろうかと思った。

具体的には死者の国における先祖たちの生前の生業である靴のエピソードが皆無で骸骨ネタに終始している点や、ミゲルの音楽と家族の絆の二者択一にもう少し葛藤やタメが欲しかったように思う。

あの年代の子供の信念としてはあんな感じなのかもしれないけれど、個人の多様性が共同体の価値観に予定調和的に飲み込まれていく違和感を、おばあちゃんと歌でうっちゃった印象もある。

と、切り口次第ではもう少し広がりを持ち得た作品なのではないかと思ったが、極めて水準の高い小粒な感動作に仕上がっているのは間違いない。

同時上映の凡庸なアナ雪短編が無駄に長いため、本作がこの尺に編集されたのだとしたら少し残念だ。
ま2だ

ま2だ