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リメンバー・ミーのsomaddesignのレビュー・感想・評価

リメンバー・ミー(2017年製作の映画)
5.0
夢の別名は呪い
今年ベスト級映画きた🤩
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原題より邦題の方が良いレアケース。原題オチバレだし。
ピクサー映画は邦題の方が良いケース多い気がします。
カールじいさんの空飛ぶ家(原題UP)とか。


家族仲の悪い自分には、死んでなお密接に関わってかなきゃいけない死後の世界ってほとんど地獄。死んだ後に第二死に怯えながら暮らすって、なかなかの煉獄だと思う。
ヘアレスドッグの名前はダンテだし、すり鉢状に広がるあっちの世界はボッティチェリがダンテ「神曲」に描いた地獄絵図みたいで、あながち煉獄イメージも間違ってない気もしてきた。


「夢 別名 呪い」とはRHYMESTERの「ONCE AGAIN」の一節。
夢を見ることの素晴らしさを描く反面、それは自分で自分に呪いをかけて自縄自縛になることの危険性も描く。モンスターズ・ユニバーシティもそうだったけど、ピクサーは時々夢と現実の折り合いについての作品が出るなあ。きっとアニメーター自身の経験が反映されてて、夢みたいな職業を目指した人なら一度や二度は直面する問題だからかも。
今作だと目指す/頑張る以前に志すことさえ禁じられた少年が、呪われたかのように他人の墓まで荒らしたら天罰を受けて地獄巡りする話に思えました。
結果として夢と現実のいい折り合いを探る話というか「NO MUSIC NO LIFE」じゃないけど、どっちもあるから各々素晴らしいって話かと。


劇中何度も歌われる「リメンバー・ミー」。
最初は旅立つ人が残された人に向けての曲かと思いきや、何度も聞くうちに旅立つ人を見送る歌でもあるんだなあと。歌われる場面が変わると歌詞の意味が逆転して多層的な意味合いを持って、逝く人送る人それぞれの心に寄り添う歌になって胸を打たれた。
小沢健二の名曲「僕らがたびに出る理由」にまつわる二人のドラマーの話が連想されちゃって、手をふってしばし別れを惜しむ鎮魂歌にも聞こえてきちゃう。


ストーリー展開に驚きはなくて、序盤の地獄めぐりやミゲルの手が透けるシーンとか「千と千尋」の影響を強く感じました。あの世にも繁華街があって、豪邸もドヤ街もあって……って世界観は「もののけ姫」製作中に宮崎駿が構想してた「あっちの世界の話」に似てるような(「もののけ姫はこうして出来た」参照)。落語の「地獄八景亡者戯」にもちょっと似てる。遠いメキシコの話なのに。

(以下余談)
日本以上に先祖供養の文化根強い中国では約2億ドルの大ヒット。昨年から女性が主人公のアメコミヒーロー物、黒人が主人公のヒーロー物etc……それまで「ヒットするわけねえ」と長年言われ続け、避けられてきた題材が尽く大ヒットしてて、隔世の感があるような、時代の節目を見るような。


26本目
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