『ホテル・ムンバイ』をみた方は必見。11月18日に配信終了のインドのテロ映画の代表作の一つ。
インデンペンデンス映画界の巨匠、アヌラーグ・カシャプの出世作。
過去ログがありましたので再投稿します。
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インド映画272本目は最初のムンバイでの大規模テロの実録映画。
Netflixで早い時期に日本語化され配信されたもの、久しく見られなかったのですが、気がついたら新着映画として再配信されていました。その早い時期に日本語字幕付きで見ました。
インディーズ出身でスタイリッシュな映画を撮る名監督アヌラーグ・カシャップの初期の映画です。
1993年のムンバイ同時爆発事件についての原作もののセミドキュメンタリーで140分越えと長く、低予算でやや冗長ですが、ごく普通の住民の供述から組織的なテロが浮かび上がってくる過程が面白く、何故か何度も見たくなってしまいます。
ロケーションは予算の関係で実物使用、ゲリラ撮影が多用されているらしく、臨場感もかなりの物。
被害者の視点は少なく、ジャーナリストと加害者と捜査官目線。なので、普通の抵抗運動がテロに組織される過程は一見わかりやすく描かれてている。
最初はコミュナルな対立だったものが組織化され、結果コミュニティーを問わずインドでは今ではテロは忌むべきものという社会認識が出来ているらしいが、この事件はそれ以前の微妙な時代の話だけに生々しい。
これ見たら、貧しくて教育がないからテロに走る、という見方の愚かさがよくわかるとおもう。
低予算ながら、見るのに楽しいスタイリッシュさと、被写体への愛情が同時に感じられる今時だとあまりない撮り方。
インド映画のトップ100とか250には大抵含まれている必見の作品です。
撮られた時期の良さと、対象へのアプローチの良さが、今でも続く高評価の理由かな、と思いました。あと、背後にある国の影響を明白に描いたのもある層には受けるのかな?
映画の完成が2004年、公開予定が2005年だったものの裁判中だったので結審まで公開が差し止められ、2006年に公開。判決の多くは2007年に出ました。
その後一名を除き死刑判決は終身刑に変更。
その一名の死刑執行が2015年とのことです。
色々な意味で含みの多い映画なので、今でも見る価値はあるかと思いました。
(暴動からテロへ 2020/11/27記 一部訂正)
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付記:ドキュドラマなのに実名のまま映画を作っていることに関しては注意して見たほうが良いかもしれません。
この映画のテロの成り立ちの解釈は、その後多くの娯楽映画でも採用されていますが、バックにある国は名指しにしないのが礼儀、というのが暗黙の了解ようです。でも、それすらもこの映画では名前が出てますよね。
古い事件なので、実際の事件のデータにはなかなか辿り着かず気になって調べようとすると、結構もやもやします。