スティーブン・キングをも賞賛せしめたスウェーデン発のスリラー。ハリウッドリメイク版「モールス」を先に観てからの鑑賞で、そこそこ忠実に再現したんだなって思ってました。原作の設定を知るまでは。
じつは邦題の「ぼくのエリ 200歳の少女」は本編にない情報を恣意的に足してるし、映倫もモザイクで決定的な悪さをしてるとのこと。となるとクロエ・グレース・モレッツちゃんを主演に使ったハリウッド版も、原作に忠実とは言えなくなります。
映画が原作に忠実であるべきとは思いませんが、原題は「let the right one in」”正しきものを招き入れよ”という意味。邦題「モールス」の英題は比較的忠実な「Let me in」。
ヴァンパイアが他人の家に入るには明確に言葉で許可された時だけなのだそう。では、”正しきもの”とは?エリとオスカーにとってお互いは?
オスカーはその孤独な境遇からエリに惹かれてしまう。エリも支えを失い孤独からオスカーに依存するようになり、プールのシーンで明らかなように危険を犯してまでオスカーを助けます。
もしエリが大人の自我を持っている、もしくは狡猾な獣ならば、オスカーを自分の呪われた宿命に引き入れる理由は単に利己的な生への執着であり、オスカーが都合よく受け入れてくれたことと、彼が幼いが故に長く使えるからやったこと。年老いて使えなくなった支えの代わりに。
しかしもしエリが子供のままの心で、自らの残虐さを呪ってるのなら?何故弱々しい子供であるオスカーを選ぶのか?
自分の宿命を呪いつつ、なぜ愛するものを巻き込んでまで生きるのか。
エリの置き手紙の意味を掘り下げるという意味では「モールス」のほうが解りやすかった。
ネタバレが過ぎるので書きませんが、女の子じゃなくても…の意味、両親の離婚の背景、父親の家に突然現れた友達のシーン、エリの擁護者?のおじさんとの関係、何故プールのシーンでひとりだけ助かったのか、など原作を読まないと解らない事がいくつもあるようです。
切なく、痛々しく、絶望的な物語。
列車のシーンで彼らは、何を会話しているんだろう。