土の中からこんにちは太郎さん

ぼくのエリ 200歳の少女の土の中からこんにちは太郎さんのレビュー・感想・評価

ぼくのエリ 200歳の少女(2008年製作の映画)
4.0
残酷。だけど・だからこそ綺麗。

主役のふたりの演技・雰囲気が良い。
年相応に子供なオスカーと、実年齢こそ人間の2倍以上なものの、世界と接する機会に恵まれ得ないエリ。
お互いに異質だけど通ずるところもあり、おっかなびっくり距離を縮めて行く様は私達の生きる現実世界で親密な関係を築き上げていく過程に共通する物があり、ファンタジー物ではあるが、リアルさがあってふたりの世界に引き込まれて行った。
オスカーの年齢が12歳という設定も絶妙で、これ以降の年頃の恋愛には性(セクシャル)が大なり性なり絡んでくる。
故にオスカーの心はどこまでも純粋で、躊躇いはあっても計算や打算などはない。
ヴァンパイアというアンチ聖(ホーリー)と、ふたりの間に通う純粋(イノセント)な心という相反するものが絶妙なバランスを保って描かれている。

音楽と合間合間に挟まれる風景も好き。
音楽は、不穏と不吉⁄平穏と日常をより際立たせていて、プロのお仕事にこういうのもなんだけど「うまいなー」と思った。
風景も、日の光を浴びて枝枝に付いた氷の粒はエリには却って残酷だし、生活感溢れるアパートの部屋もこれからのオスカーには縁遠くなってしまうであろうことも美しいと同時に残酷。
合わせ鏡のような対比がそこらに散りばめられていて綺麗な映画だと感じた。

20.9.4追記
映画好きの友人曰く、エリの股間のボカシの下は傷だらけ=去勢跡らしい。
ヴァンパイアというキリスト教におけるアンチ聖(ホーリー)にして、ふたりの心は純粋という色がますます濃くなる設定。