<概説>
いじめられっ子は生傷を増やしながら鬱屈した日々を送っていた。巷で猟奇連続殺人が話題でも彼の脅威はいじめっ子グループばかり。そんな折、少年は世にも美しい12歳の少女と出逢うことになる。繊細なタッチで描かれる青春ホラー。
<感想>
青春映画としてもいいのですが、せっかくなので掘り下げを。
ずっと気になっていたこととして、なぜエリは吸血鬼として描かれたのか。雪女や人狼でもよさそうなのに、あえて吸血鬼が舞台に呼ばれた意義とは。
それは作中に明示されたあの場面に象徴されています。
"吸血鬼は招かれなければ家に入れない"
これは単独だとなんのことやらわからんのですが、対比として考えてみるとわかりやすい。つまり吸血鬼は家に入ることは困難でも、家から出ていくことは容易なのです。
オスカーの家はお世辞にもいい環境とは言えません。幼少期のトラウマそのもののような環境で、飛び出していけるものなら飛び出していきたい。
しかし「家はぼくの家だから」という漠然とした呪縛が、不思議と子どもをその地獄に縛りつけます。
吸血鬼が家に入るのにくらべたら、そんなの簡単なのに。
男女の交流を緻密に描いたのは見事です。
ただ本作でむしろ描きたかったのは、子どもたちの無限の可能性と希望だったのではないかなあと。オスカーを果のない旅路に運ぶ列車を眺めながら胸が締め付けられました。